だから、初めての北極遠征でアザラシやカリブー、イワナを生で食べるときにも、私にためらいはなかった。イヌイットの猟師やその家族の温かさが背を押してくれたのかもしれない。彼らは、遠方からやって来た白人の若者をすぐに受け入れてくれた。
だからこそ私は、ともに食卓を囲み、ひとつの料理を分かち合うひとときを心から楽しむことができたのだ。
とはいえ、3度目の北極遠征まで、私は醤油の存在を知らずにいたのだ。
日本を訪れ、あの鮮烈で、素材の味を際立たせる驚異の味と出会ってからというもの、私は極北の地を訪れる際には必ずモントリオールにある小さな日本専門店に立ち寄って、キッコーマン醤油を2缶、買っていくことにしている。
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