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●忍者あそびではない。漢字で書けば〈水団〉。小麦粉を水で捏ね、適当に千切って野菜などと共に味噌仕立てや醤油仕立ての汁で煮る、あれ。岩手の方では〈ひっ摘み〉と呼ぶ。〈とって投げ〉とも。“そのまんま”で解りやすい。山旅で盛岡へ行く機会も多いから、序でにひっ摘みを看板とする店を訪ねたこともある。美食とは程遠い水団が、私しゃ滅法好きなんですよ。以前に何度かうどん作りをしてあそんだことがあり、その残り生地を水団に仕立てたのが始まりだった。手軽さと素朴さが気に入って、以後、不規則な生活の中で、小腹が空いた時の慰みにも役立てている。何号か前に書いた〈鴨鍋〉の残り汁も水団に化けた。うどん生地の流用から始まった私の水団は、普通より固くしっかりと練り込む。薄手の、小振りの浮き雲状にあしらい、一度白湯で茹でてから土鍋に移すのが、私流である。ラップフィルムの芯を麺棒にして、薄く伸ばしてから切り分けることもある。これは〈はっとう〉とか〈ばっと〉とか〈かっけ〉と呼ぶのかも知れない。細く切り麺にすると素朴さが失われるから、しない。胡麻油・胡麻粒・鹿尾菜・南瓜・蓬・菠薐草などを練り込むのも有りだ。悪乗りして、調理した鹿尾菜や切り干し大根・おみ漬け・小豆餡などを包んでもよいのだか、ここまでやると餃子・お焼きモードに近くなる。小麦粉ではなく蕎麦粉でやることもある。醤油や味噌仕立ての和式鍋の他、洋風・中華風・エスニック風のスープでもOKである。私の場合、実は白湯に泳がせて、薬味を効かせたポン酢醤油をつけて食べるのが基本なのだ。ポン酢に飽きたら味噌だれ・胡麻だれ・胡桃だれと変幻自在に食いあそぶ。


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