初めの鍋で、煙道の余熱を利用して塩水を濃縮し、次の平釜で天然ガスを使って煮つめて塩を採っている。最後に取り出された塩の結晶は、竹のスノコの上にある円柱の筒に積み上げられて脱水される。塩の結晶に付着している苦汁が滴り落ちるのを待つのである。
榮海井の製塩で驚いたことは、苦汁を取るのに豆乳を加え、苦汁を吸い込んで茶色に豆腐化したものを丁寧に網で掬う手法である。日本でも白く結晶のつやをだすために豆腐の絞り汁を入れるところもある。豆乳を使って苦汁を取るといった創意とこだわりに、塩職人の塩作りへの熱い思いが伝わってくる。
こうした二千年におよぶ塩作りの伝統が四川料理を支えてきたのだ。中国では昔から、四川の塩は「百味之祖、食肴之将、国之大宝」と言い伝えられてきたのである。
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