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●ぐびっと、儂の一日はグラス一杯のトマトジュースから始まる。とろーりと食道を通過。クエン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、ビタミンCが澱んだ儂の胃袋をすっきりさせる。リコピンやベータカロチンが作用し、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛もじわりと効いて、血液は春の小川のごとく、そして脳味噌がくっきりと覚醒する(ような気がする)。ガキの頃から夏と言えばトマトだった。学校帰りにトマト畑へ潜り込んでは、まだ半分青い自分の顔ほどもある歪んだ生温かいやつを盗み食ったりしたものだ。儂とトマトとの関係は、要約すれば、たぶんポパイと菠薐草の関係に似ている。お利口な先生はトマトを狼の桃と呼び、馬鹿な伊太公(冗談です)は金の林檎と呼ぶ。椎名林檎はトマトルと訛って歌い、死んだ祖父さんは赤茄子と言った。トマトから生まれた桃太郎を食い過ぎて儂はこんな風におたんこなすになった。

▲古いタイプの儂だから、冬の間は茄子も胡瓜も、そして生のトマトもあまり食べない――と言うか痩せの我慢を張っている。夏の太陽を思い切り浴びた露地物(あまり無いかも知れないけど)こそ本命である。「近頃のトマトはちょっと気取り過ぎでないかい!?」と儂ゃあ思っている。しかし、フルーツ気取りも旨いっちゃあ旨い。

■高がトマトである。別に変わった食い方をするわけじゃない。ジュースがぶ飲みの他、野生種みたいな小粒トマトのグリルが好きだ。チーズや茄子やアボカドとのコラボ、トマトのオープンオムレツ、トマトピラフ、ブルスケッタ……とあちら風に。もちろんパスタやピッツァには付きものだし、カレーにだってたっぷりトマト缶をぶち込んでやる。


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