No.205




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●儂の個人的な感覚からすれば、山野草を口にするのはゴールデンウィーク以後だが、近所の小さなスーパーを覗いたら、(一月現在)早くも蕗ノ薹や独活や擬宝珠をはじめ七〜八種かそれ以上が、堂々と並んでいた。通年居座るもの、入れ替わるもの、合計すればその三倍は下るまい。当然人の手によって栽培されたものだし、何の断わりもなく野菜売場に並んでいるのだから、それを勝手に野の草、山の草と決め付けた儂の間違いだった。儂にとって、それらは買うものではなく自由に採って食べるものなのだが……。

▲山宿で「こんなものしか無くてどうも……」と首を縮めながら出されるモノホンの山菜が嬉しい。妙に自慢たらしく勧められる場合は概して栽培ものが多い。インポートものも少なくないと漏れ聞いている。山女や岩魚もほとんどが養殖だから、そこら辺の沢で釣り上げた形の不揃いなやつが皿に載ってたりすると、ホントに嬉しい。魚の場合は天然か養殖か、あるいは国内産かインポートものかが、店で買う場合の選択肢となるけれど。野菜関係はすでにもう改良(?)栽培品ばかりだから、天然原種との比較なんて問題外だ。

■縞鯵も間八も鰤も鯛も、養殖関係は似たような味になって(鰯脂臭いような、抗生物質臭いような気がして)、ちょっとまだまだ仲良しにはなれない。人も、街にはバーガータイプやハマチタイプが多いようで、苦々しく灰汁抜けしない山菜タイプのマイノリティは、きっと絶滅の途をたどることになるのだろう。とまれ、天然ものを自分で採取するか、採取した人の顔が見える場合のみを〈純正山菜〉と呼んで、敬意を表して食したいと思う。

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