No.208




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●姪の小娘がネット系のメロンを頬張りながら、うっとり浸りきった面持ちで「私、メロンが一番好き」と言った。「この甘ちゃんが」と儂は苦笑した。あの甘さ・香気・トロリ感を嫌う人はいないだろうし、それは儂とて同じだ。だが、自ら進んで食べようとは思わない。あまりにも“作られ過ぎた”旨味は、舌上に些か白けを感じてしまう。むしろ、昔の真桑瓜の――あのクソ不味さ加減を懐かしく思い出したりする。一方、同じ瓜仲間とは言え、甘美な果物メロンとは遠く掛け離れた野菜のゴーヤーを、彼女は吐き出してしまう。今はまだ、もうすこし歳が行ったら好きになるのかも知れない。

▲ゴーヤーのあの苦さ加減も表皮のテクスチャーも、初対面の時には異様としか思えなかった。だが次の瞬間、儂はその強烈な個性の虜になった。かつて東京辺りでは、店頭に見ることもなかったこの不思議な食物も、今ではどこのスーパーにも、しかも周年、普通に並べられている。`普通aになってから薄々感じていたのだが、どうも以前のようには苦くないし、苦くなくなった分だけ旨味も抜けてしまったような気がする。やはり“売り”のため改?したのだろうか――。

■ゴーヤーが時季を選ばなくなっても、儂がそれを口にするのは暑い季節だけだ。丸のまま焼き網に載せてみた。ちょっと乱暴かな――と考えて、タテ二つにナイフを入れた。やっぱり邪魔かも……と、ワタの部分はスプーンで掻き取った。そこに味噌を塗りたくる。流行の焼酎を生のままグィと呷った。そして焼き立てのゴーヤーを鷲掴みにして齧った。日頃はビール・清酒党の儂だけど、この時ばかりは「焼酎も悪くないネ」と思わずニヤリ。

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