No.214




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●スキーを履いて北海道の凸々に遊んだ時期があった。もちろん、巡りも欠かさなかった。彼の地には昆布岳があり、昆布、昆布川なんていうのもあった。で、唐獅子牡丹を総身に纏った凄みのある兄さんが独りカランに向かって座り、見事な絵柄に磨きをかけていたのを思い出した。昆布出しの効いたいい湯だった――って、そんな訳ないか!

▲kompはアイヌ語で、ヤマトではかつて比呂米とか衣比須米と呼んだらしい。褐藻類・褐藻目・昆布属の海藻である。決して海草じゃないけんね。御披露目とか養老昆布なんていう語呂合わせをして、とにかくメデタイのである。明けましておめでとうございます。縁起物・旨味の塊・健康美容食品。「積堅を破り、水腫を利し、瘰癧・えい瘤・狼瘡を消す(本朝食鑑)」はさっぱり解らぬが、薬効あらたかというかクスリそのものである。昆布よ御主は偉い。産地の北海道も偉い。(上の絵は昆布をあしらった鏡餅のつもりです)。

■儂も子供の頃はカツブシ削りをよく手伝わされた。長いこと儂は昆布なんてカツブシの代用品ぐらいにしか思わなかった。食に無貪着な山賊暮らしの中で、恥ずかしながら、今は手元にカツブシの削り器もない……と、昆布茶をすすりながらこの駄文を書いている。実は昆布茶をあまり好まない。朧昆布や昆布巻きの類いも同様である。椎茸昆布でお茶漬けサラサラはいいのだが塩分が強過ぎてどうも……。夏も冬も、つまり年間を通して“湯豆腐でイッパイ”が多い儂は、恥ずかしながら、土鍋の底に敷いた出し昆布を最後に齧るのが、結局イチバン好きなのだ。固さを持て余す場合は結び昆布にして煮物関係に回す。例えばおでんとか煮染めに――。

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