では、どうやったらいいセット役になれるだろうか? あるいは誰にまかせたらいいか? 答えは、自分のお金で食べて、味と金額にシヴィアなひとだ。 value for moneyを追求するひとは、いい店を知っていて、そこを大事にしているから、いざというときいい会を設定できる。それは、店がそのひとに協力してくれるからだ。「この人が言うなら、よくしてあげなくちゃ」そう店が思ってくれたら成功だ。
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親しい店の美味しい会食は“Value for money”
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それをあらわすのにいい言葉が、小見出しに書いた「PPO」のできる人。PPOとは、フランス人の実態を書いたアメリカ人の造語で、Persistent Personal Operationの略。意味は「辛抱づよく個人的事情を訴える作戦」で、困ったときの打開策に使えという異文化研究者の論。フランス人は客へのサーヴィス精神がない、ノンばかり言う、でもその彼らにウィを言わせて、欲しいものを手に入れるコツがこれで、最初から要求だけぶつけても成功しないという、面白い論理だ。一言でいえば人間的に迫れ、である。
読んでハタと気づいたのは、意味は少し違うけれど、贔屓の店を持って、そこでいいサーヴィスを受けるには、一種このPPOが働くのではないか、ということだ。よく足をはこぶこと、店のひとと会話して親しくなること、それがいい関係の始まりだ。お金を払うだけの仏頂面の客は好かれない。
でも、日本人のお客はしばしば、レストランでも、お菓子屋でも、笑ったらソンとばかりに、アテンダントへの愛想もない。席にグラスを持って来たらにっこりしてもいいじゃないか。いちいちありがとうを言う必要はないが、同じ人間なのだから、ほほえむぐらいはできるだろうに。支配人や主人がいれば、何がおいしかったぐらい、言葉が出ないかしら?
簡単そうに見えて、案外PPOがだれにでも出来るわけじゃないのは、人によっては、店のつまみ食いが好きだから。贔屓の店をきめずに、珍しがってあっちこっちへ行く。こういうひとは、宿無し鳥と同じで、ねぐらが無く、顧客になれない。PPOをPerpetual Personal Operationにしてもいい。perpeturalは長くつづく、という意味だから、個人的な関係を長く続けることで、これが基本だ。
ほかにも気づく日本人のマイナス性癖がある。それは、安い店では横柄になり、高い店では卑屈になる、店の格やくみしやすいかどうかで、態度を変える癖。
もうひとつのソンは、率直でないこと。思ったことをスイと口にだすのは、とても人間的で、人柄が出る。そこで店とお客は架け橋を持つようになる。でも心にあることを言わないひとは、おいしい、まずいの反応もないモノ食うキカイ。張り合いがない。ぬるかった、熱くして、という文句だっていい。それは生きた反応だから、店のほうも、お客の好みを知ることができる。同じアジア人でも、中国人は日本人よりずっと率直だから、接客業でも成功するし、お客も店で楽しんでいるように見える。レストランでは脱日本人が必要じゃないか? |