今度の大発見は、浅草は江戸の気風を持ちながら、インターナショナルな街にどんどん変貌してることだった。外国人が大勢歩いている、そして買うべきものを知っている、お店では英語が通じる、態度もフレンドリーでオープン、カードも使える。日本じゃないみたいだ。でも考えると、江戸っ子は役人や権力キライ、意気で生きる人たちだから外国人との共通項を持っているのだ。
ニューヨークからのお客というと、ちゃんと英語の応対がくる。そして、安い! ちりめん風で、黒地にしゃれた柄のポケットや縁を斜めにつけたエプロンドレスが、なんと二千円。アレッサンドラが四ヶ月の赤ちゃんにコットンのハッピとおそろいのパンツを買うと「フォアマンス? ディスイズグッド」とおかみさんがにっこり渡す。
「和ばさみ買いたいの」とヤッちゃんが言った。「『かね惣』に案内するつもりだったのよ。代々の刃物のいい店よ」。彼女は和ばさみを三本買った。店も手慣れたもので、はい、と三寸五分のサイズ千三百円を出す。いいお土産だ。そこへドイツの男数人もはいってきた。和ばさみは、西洋にはないから、いま外国での人気商品だと知った。よく切れて、左右どっちの手でも使える。
美家古寿司は、生粋の江戸ッ子の主人自らがにぎる江戸風のにぎりを誇りにしている。小さい店だから、カウンターは七人でいっぱいになる。お寿司はタネの説明がむずかしい。「穴子って何?」「知らない。でもファミリー・オブ・イール(うなぎ)よ」。『弁天山』はおまかせで十二カンとのり巻きが六つ。
「ここのにぎりは、タレなり、お醤油なり、シメてあったり、焙ってあったりで、そのままの生はないのよ。それが江戸のにぎりなの」
「おいしいー! ニューヨークに帰ったら、もうお寿司たべられない!」
「ぜんぜん違うわ」
いとこたちには『漬け丼』も試してもらった。まぐろの醤油漬けが、たっぷりの茗荷に囲まれている超おいしいお丼だ。
「これ、何? おいしー」
「茗荷は何ていうの?」に、主人が、
「ピンク・ジンジャーって言うらしいですよ。私も勉強したんです。お客さまに訊かれるんで。かつをはボニートです」
ここもインターナショナルだ。タイラガイと鯛とわかめのぬたを食べていると、ドイツ人が入り口に顔を見せた。二時に十人でくるけど、中の二人がヴェジテリアンで、魚でないのものをにぎってほしいという注文。毎年、ドイツから来る、日本語成人学級の生徒たちのグループだ。主人はせっせとニンジンを千切りにし始めた。
夕方から私の家にくつろいで、四人でワインと焼き鳥でおしゃべりに夜を更かした。
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