ハーブのある食卓はうれしいけれど、値段が高いのが悩みの種。いろんな種類を持っていないとお料理ができないのに、じき傷むから困る。おまけにうちは日当たりがわるいから、庭でハーブをつくることができない。セージやタイム、バジルやローズマリー、タラゴンなど、みんな店で買うことになる。
セージやタラゴンは匂いに特徴があって、慣れないとダメな人もいる。タラゴンをきざんでコッテージチーズに混ぜ、塩とエクストラヴァージン・オリーヴオイルを加え、キュウリのスライスを加えると、とてもおいしいサラダになる。でもパーティに出してみたら、これだけ残ったから、匂いが強すぎたのかも。
バジルは誰もが好きなハーブ。私もスープにいれ、パスタやオムレツにいれ、これなしでは一日もすまないほど。ズッキーニをバジルで香りづけしたクリーミイなスープがイタリー料理にある。ズッキーニはポテトや玉ねぎと一緒にオリーヴオイルでいため、チキンストックで煮て、やわらかくなったらバミックスで砕き、たっぷりのバジル、ガーリック、全卵を加えて火を通し、バターを落とす。最後にカリッとしたパンを一切れ浮かべてサーヴする。イタリー人はスープ好きだが、これはかなり濃厚な食べるスープだ。
イタリーと日本は、さまざまな麺類を持ち、誰もが麺好きな国という点で、共通してるけど、ひとつ大きな違いは、イタリー人は、インスタントパスタは絶対に製造しない。生を自分でつくるほど凝らなくても、少なくとも麺は必ず自分で茹でるもの、という姿勢がいい。「マリオの料理」に、バジルのペーストで和えるパスタがある。バジルがたっぷり手にはいったとき作った。ジェノヴァ風ペーストと勝手に名付けたのは、帆船時代、春から夏にかけて船乗りがジェノヴァの港に帰ってくると、丘一面に生えたバジルが海上まで匂って、故郷だ! と感動したと、このレセピに書いてあったから。
バジルを手でざっと千切り、ガーリック数片と松の実一カップと一緒にし、潰してつくるペーストだ。大きめのすり鉢とすりこぎでゴシゴシやるといい。オリーヴオイルはエクストラヴァージンを一カップ。パルミジ
ャーノ(パルメザンチーズ)も一カップ。すべてよく摺って混ぜる。タリアテッレをアルデンテに茹でて、器にあけ、ペーストを混ぜる。単純なだけ、バジル好きには感激的においしい。
日本人の目には、松の実とパルミジャーノとオリーヴオイルの多さにたじろぐけれど、やってみるとケロリと使いこなしてしまう。イタリー料理に限らず、プロヴァンス料理でも松の実はずいぶん使われていて、どんな松から採るのか気になる。日本の小さな松ぼっくりでなく、向こうのは巨大だから、ああいう松から採れる実なのかしら?
日本もハーブの生きる時代だ。ハーブがお料理を抜群においしくするのは、おしゃれと同じで、どれとどれが合うか、組み合わせの繊細さとセンスのよさが、効果を足し算でなく、掛け算のように倍増するからだ。
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