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展示会議会場
昨年の十一月、私は米国ラスベガスで開催された「国際貿易展示会議・サプライサイドウエスト」に参加し、自分のつくった「粟国の塩」と「にがり」を紹介してまいりました。
この展示会議は、日本の厚生省にあたる「米国食品医薬局」の肝いりで開催され、世界中の約七百社で製造される優れた食品、医薬品、健康食品を紹介し、それらを利用して世界中の人々の健康のための商品開発に結びつけていこうという、米国最大級の展示と商談の会議です。沖縄からは、「粟国の塩」と他に一社が出展しました。


こちらに来て、まず目に付いたのは歩くこともままならないほどに肥満した人たちです。この肥満は生活習慣病の心臓病、がん、脳卒中ばかりでなく多くの病気の原因になり、いまや肥満解消は国家的プロジェクトにまでなっているとのことです。私もランチにハンバーガーとフィッシュ・アンド・チップスを試してみましたが、半分食べるのもやっとでした。ファーストフードを主体としたアメリカ人の食生活と自動車社会が肥満の原因であることは間違いないところです。

展示ブースの筆者
また、信じがたいほどの種類のサプリメントがスーパーなどで売られていて、とても安価で買うことができます。本来は自然の食品から摂取出来るものまでサプリメントになっています。そのため安易なサプリメントの摂り過ぎもまた大きな問題になっています。今回、私は海のミネラルがバランスよく溶け込んでいる液体「にがり」も展示、
紹介しました。こちらではこのような「にがり」はありませんから、とても興味を引いたようでした。"NIGARI"が世界語になって世界の人々の健康にお役に立てばと思います。


以前からあった日本食人気は、今や大ブームになっていました。一ヶ月に一億円以上も売り上げる日本食レストランが多数出現し、スーパーでは、納豆、豆腐、醤油、味噌が並び、惣菜コーナーには寿司が売られていて、日系人ばかりではなくアメリカ人も慣れた様子で買っているのを見ていると納得する話です。
なかでも沖縄の食は、世界に一千万人の読者がいるといわれる雑誌、「ナショナル・ジオグラフィック」の十一月号にも取り上げられ、今や長寿の島・沖縄の食の情報が一般にも浸透しているようでした。

「粟国の塩」はロサンジェルス、ニューヨークにある日本食専門スーパーマーケットで販売され、数店の日本食レストランでも使われていました。私は、ハリウッドにあるレストランKATSU-YAで「粟国の塩」とアメリカの食材のコラボレーションを楽しませていただき、自分の作った塩をアメリカで味わう幸せを感じました。

アメリカ食材の寿司
アメリカでは、一般的に料理には岩塩を使っていますが、こだわりを持ったレストランなどは海塩を使っています。「粟国の塩」を使っている日本食レストランのシェフは「この塩は、食材を選ばず、おむすびにするとお米一粒一粒の旨味、甘味を感じることが出来る。淡白な白身の刺身は塩だけで味が引き立つ。また、ビールを飲むとき、アワの上に一つまみ振りかけると、麦芽、ホップの旨味を引き立ててくれる」と話してくれました。


今回の視察で、日本食、さらには沖縄の医食同源を中心とした長寿食文化への関心の高さに驚かされ、そのリクエストに応えるための基礎作りの必要性を痛感しました。日本の商品の信頼を得るための第一条件は、商品が本物であること。ひとつでも粗悪な商品を売れば、せっかくの日本食への期待も泡と消えてしまうからです。
また、食品輸出の輸送費も大きな壁になっています。例えば、日本では千円程度のものが現地では日本の倍近くなってしまいます。そのため食品輸出に消極的な企業も多くあります。外国では国際競争力を高めるために、国や団体による補助もあります。それこそ、沖縄に脈々と流れている「結いマール(助け合い)」の精神で日本でも国や企業が協力することが必要です。


シェフを囲んで

今回のアメリカ行きで、多くのことを体験し、多くのことを知ることが出来ました。私の塩作りの目標である「世界中のすべての人に良い塩を」を、実現させるための新たな一歩になったと確信すると同時に、良い塩を追求していくさらなる意欲を駆り立てることが出来たと思っています。



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