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今の沖縄ブームの人気のひとつに、沖縄料理があります。中でも「ゴーヤーチャンプルー」は代表的な料理として知られています。チャンプルーとは“混ぜこぜ”という意味で、野菜、豆腐、ソーメン、肉、卵など、あらゆるものを油や調味料をたくさん使ってタシャー(炒める)します。味はこってりしたアジクーター(濃い味)です。

このチャンプルー料理は、戦後の駐留米軍の影響を受けた料理で、高脂肪、高カロリーの軍用の缶詰などが食材に使われていたこともあり、「医食同源」を大切にする伝統的な沖縄料理とはまったく違うものになってしまいました。この戦後生まれのチャンプルーこそ、長寿を誇っていた沖縄の平均寿命の順位を年々下げる原因のひとつではないかと思います。


沖縄の宮廷料理は、中国王朝の伝統、日本の茶道の流れを汲み、器はもちろん料理の配膳の仕方まで事細かな決まりがあり、作り手にも食する側にも作法と美があって、料理の基本に長寿のための深い考え方がありました。

例えば、料理の盛り付けを美しく彩るため食品に色づけをする場合は、一般的に化学着色料を使うことが多いのですが、沖縄では天然の素材をうまく利用しました。

緑色には、カバサー(長命草)やイーチョウバー(ウイキョウ)などの薬草をすり鉢ですり、できた汁に塩を加えると、塩の力で色が鮮やかになり、それで着色しました。黄色にはウコン、などと色によって様々な薬草を使いました。

薬草で着色した食品には、その素材に含まれる栄養のほかに薬草の薬効が加わります。料理に彩りを付けるにも「医食同源」の考えが浸透していたのです。

沖縄の伝統料理は、少ない食材を海塩だけのシンプルな味付けで食べるタシャー(炒める)が中心で、そうめん、ゴーヤー、野菜、豆腐はその一つ一つが主役としてタシャーされました。シンプルでありながら素材の味を大切にした調理法は、彩りも味も抜群で、健康的な料理になります。

沖縄ブームは結構なことですが、食に関して言えば、「医食同源」を考えた本来の沖縄料理で無いことが残念でなりません。沖縄県人として、自分たちのためにも、昔からある地域のものを見直し、大切に育て、伝えていかなければならないと考えています。また、観光客の皆様にも本来の沖縄料理を味わってほしいと思っております。



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