No.236









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●山を歩くとき、ケモノたちの落としものをよく観察する。彼らの棲息状況が判るし、何が混入しているかで食性を知ることもある。特にクロスケのものなんぞ、鼻をくっつけるようにして眺めたりする。警戒を要する相手でもあるからだ。

▲山畑に生るプチトマトをいただき、「私も作りたい」とその栽培方法を尋ねたら、「これを食った後、そこら辺の草むらにしゃがんで考え事をすればいいんだ――後でじゃんじゃん生えてくる」と教えられた人がいる。花が美しく咲くのは虫たちに集まってもらい受粉を手伝ってもらうためだし、果実が美味しいのは鳥やケモノたちに食べてもらって、種を別の場所に運んでもらうため……だってことを、日頃(儂もだけど)あなたはすっかり忘れてるでしょう。

■毎日食べたものをメールしてくる奇特な人がいる。ある日〈栗茸〉とあったので、店には売ってない種類だから「何処で採ったの?」と儂は尋ねた。「温泉の帰りに街道沿いの出店で買った」のメールが返ってきた。キノコたちもそろそろお仕舞いとなる今頃に、何処の雑木林にも(切株などに)ワサワサと群生するキノコである。儂は「クソキノコ」と蹴散らしながら歩いたりするけれど、ホントは利用価値が高い。時折り持ち帰り、粥やうどんに入れて食べることもある。

●野の幸・山の幸を追いかけていると、季節は確実にしかも意外な早足で展開していることに気付く。「此奴はいつも変なものばかり食ってる」と思われるかも知れないが、その通りである。何度も書くけれど、食は「美味いかどうか」よりも「面白いかどうか」が肝心――と儂は思っている。自分で採って作って食す中で感激することが多い。

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