十二月は好き、一月はちょっぴり好きさが落ちる。十二月はホリデイの楽しみが控えているけど、一月は休みが終わる月で、その先には憂鬱な二月が控えている。二月の救いは短いことだ。暦をつくった人は賢い。
メリー・クリスマス、ハッピー・ホリデイというなら、中身もそれらしくなくちゃ。用事を減らし、プライヴェートライフを充実させる。自分のためのくつろぎ時間を増やすこと。好きな音楽のCD、好きなミステリーを買い込み、おいしい食べ物――パスカル・カフェのチョコレート、ルヴァンのパンにエシレのバター、開新堂のお菓子、シャンパンをそろえる。
クリスマスのギフトは、早めに戴いても、自分たち用のも、居間の隅に積み上げて、クリスマスの朝、開けるのを心待ちにする。戴いたとき包みを開けても、食べ物でなければまた包んで、クリスマスの朝のお楽しみにとっておく。
うちのネコたちにもプレゼントがある。専用のネズミ模様のクツシタに、ピンポンボールがたくさん詰めてあるのは、ボール追っかけが大好きだから。このクツシタは、NYマディソン街の小粋なデリ、E・A・Tの隣の子供用品の店で見つけた。マタタビを入れて編んだ毛糸のボールもある。ピンポン玉は、この頃は探すのが一苦労。運動具店のは競技用で高い。街のおもちゃ屋はいまは減る一方で、広尾の商店街で一軒見つけ、そこでやっと買いこんだ。
「この間、予約しといたピンポン玉ちょうだい」
「えーと、予約?」不審そう。
「男のひとよ。あなたじゃなかった?」
「あ、弟でしょう。ぼくたち、三人兄弟なんです」
ピンポンボールみたいに、そっくりの兄弟だった。
十二月に入ると、娘と相談が始まる。
「今年のクリスマス・ディナーはどうする?」
「ステーキ? ロースト・チキンのロブション風?」
これは、皮と肉の間に、オリーヴオイルに浸けたフラット(イタリアン)パセリをたっぷり入れて焼く。
クリスマスのシャンパンはいいのにしなくちゃと、しなのやでモエ・エ・シャンドンを奮発した日、ヴーヴ・クリコが来てショック!
「いいじゃないの。お正月用にすれば」
日本は生鮮食品の市場が四日まで開かないから、ストックを考えなくちゃ。デパートが二日から開いても、買いに出るなんて野暮。そもそも暮も、忙しくならない工夫がいる。ギフトは早く出す、クリスマスカードも早めに(これだけは遅くなってしまう)、年賀状は出さない。おせちは数年凝ったけれど、いまはやめた。
「今年は年越し蕎麦もやめない?」
これも年々早くなって、並木の薮には、十二月早めに行ってしまう。そして、
「代わりに開新堂のオードヴルにしましょ」
うちでのんびりする材料は、クマの冬ごもり気分でいく。世間のしきたりと関係なく、好きなものだけ。スモークド・サーモン、自分で焼く肉のパイ、鴨やターキー。友人から送られた手作りのフルーツケーキとパウンドケーキ。あとのお菓子は自分で焼こう。ロブションやラルースや、いろんな本を眺めて試案中。ネコたちのごちそうは、ステーキの端っことイクラだ。
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