No.228







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●ごく幼い頃に、最初に覚えた野の草・雑草が、土筆・蒲公英・須美礼の類いだったと思う。それだけに、何の抵抗もなく自然にそれを口にするようになった。蒲公英は我が棲息地にも西洋系が増々盛んに扶植しているのだが、土筆の方は何故か年々見付けるのが難しくなる。TCDDが降り注ぐ土手や車の排気を浴びる路肩にはうっかり手を伸ばせないし、無闇に除草剤を噴霧するやつがいるのも困る。高が野の草・雑草食いだが、なかなか気の抜けないご時世なのだ。

▲土筆を沢山ゲットしたのでご近所にお裾分けしたら、「袴を取るのが大変」なんて言われてしまった。「黒マッペのもやしを掃除するよりずっと楽だろッ」と言いかけて止めた。彼女はもやしのシッポも取らないに違いない。土筆はあまから味でさらりと煮て酒の摘まみに、さらにそれを玉子で綴じたり、炊きたての白飯に混ぜ込んだり……この土筆ご飯をワサワサと食わないことには、春の気分になれない。

■蒲公英(ダンデライアン)――名前もいい。儂は黄色が好きなのだ。花や若い葉もサラダその他にどんどん使えばいいと思う。儂の棲息する“村”の東の外れに素朴な流れに沿った長い桜並木があって、花時には家族連れと老・若のカップルが大勢繰り出す。呑んで騒ぐ奴はいない。代りに付近で草摘む人が多い。何を採っているのかと覗いたら大方が蓬(よもぎ)だった。雑草食いの中でも断トツの人気らしい。蓬は花見時を待たずとも、可成り早い時期から、白い粉を吹いたような若葉を蔓延(はびこ)らせている。草餅にする他、嫁菜と同様に茹でて刻んで菜飯や菜スパゲッティを愉しむ。精進揚げのもう一品に加えてもいいし、育った奴を浴槽に打(ぶ)ち込んでやる手もある。

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