日本は暮らしにくい国だ。何でもあるけど、値段が高い。中古の家電製品は、安くそろえたい人への救いなのに、BSE(狂牛病)と間違いそうなPSE法とかで、お店では、五年以上まえの家電は検査マークを貼らないと売れなくなる。日本の品ってそんなに粗悪だヨって、政府が宣伝するようなものだ。
私は去年の秋、千円の電子レンジを買った。料理用ではなく、冬にウォーミング・ベアをチンして、夜の足温めに使いたい。これはクマの中の小麦粒が温めてくれる。千円で売るという外国人の知らせをスーパーで見つけて、一緒に二千円で簡素なオーディオも買った。
「もったいない」から、使えるものは使う、いらなければ人にあげる、一つモノを使いつづける。それが、モノに命を見つけて、大事にする精神だ。「もったいない」は、いま日本から船出して、世界に通用する言葉になりつつあるようだ。
モノ捨てない派は、世界中に分布する。日本だけの専売特許じゃない「モノを大事に」のライフスタイルだ。でもPSE法は、それを破壊する悪法。「弱きをくじき、強きを助ける」なんて、ひどい国だと思いませんか。私はアメリカの留学時代、救世軍で激安のカバンや小机を買って大助かりした。
アンディ・ルーニイは、何十年まえのなじみのタイプライターを捨てずに、使いつづけている。使える道具が無造作に廊下や道路に出ているのを見ると胸が痛むと本に書いている。私の友達は、まだ使える真空掃除機を「いるなら上げるわ」と通いのお手伝いに言ったら断られ、せめてとリボンを結んで捨てた。あとで「あれ、もらえばよかった」とお手伝いが言ったのは、見栄を張ったのかしら?
私の節約法をざっと書くと――
◆ペットボトルや缶の飲料は買わない
◆外出には水を持ち歩く(専用のいれもので)
◆お弁当は買わない、遠出はうちのお弁当を持参
◆パン粉は買わない、古いパンでつくる
◆古いバゲットは塩味のフレンチトーストにする
◆ローストチキンの骨でストックをとる
◆デザートのお菓子はうちでつくる(買うのは稀)
◆オーガニック・オレンジの皮は干して使う
◆クルマの移動ではSAやPAはトイレットだけ―― 食べない、買わない
◆買い物の紙袋は持って出て繰り返し使う
◆スーパーの袋や容器や保冷材は店に返す
友達にも工夫じょうずはいろいろいる。湿気た海苔で海苔の佃煮をつくる人。ケーキの名人のフルーツケーキやパウンドケーキは、お店のようにファンシーでない代わり、味はもっとよい。こういう人は、ちょっとしたお礼に自作のケーキや佃煮を使い、おいしくてよろこばれている。
昔はいまみたいにモノが豊富でなかったから、贈り物はお手製や、庭の花や野菜だったらしい。この精神を復活したら、経済なうえ、少し丁寧な暮らしができ、人とのつながりも濃くなるのじゃないか。
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