No.232





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●カレーライスなるものを頻繁に口にするようになったのは、たぶん学生時代のことだ。学生食堂(がくしょく)の代表メニューのそれを、飽きもせずよく食べていた。じゃがいもと人参と豚肉がゴロンゴロンしている、黄色いうどん粉カレーだった。一皿四十五円也。旨いわけもないけれど、空腹が満たされればそれでよかった。もっとも腹が満たされていればそれでよいのは齢を重ねた今も同じで、半端な時間に有り合わせの摘まみを見繕い、ビールなり酒をちょいとやれば、当座は、腹の虫やなんやかや……みな治まってしまう。

▲二度目のカレーのマイブームは〈山賊生活〉に入ってからのこと。便利なレトルトパックのカレーが現われ、同時に農協のパックライスも現われたから、山中を何日もほっつき歩くのに、大いに重宝したものだ。そして第三次のマイブーム――それは「乱れた“生活習慣”の対策として、辛い御飯がことのほか有効である」と聞いてからのことだ。

■今は壜詰めか缶詰めになった赤・黄・緑のカレーペーストやトムヤム、はたまたタマリンド、ガラムマサラ、ココナッツなどを一通り常備しているので、それらを適宜組み合わせて、思いたったらいつでも、ささっと手軽に、エスニック調の辛い御飯をやっつけることができる。実は東南アジアのどの国へも出掛けたことがない。敢えて勉強もしないから、常にいい加減な自己流である。具材は以前好んだ小羊や若鶏はあまり使わなくなり、何故か最近は季節季節の野菜とか魚貝関係のカレーが多くなった。それも単品かせいぜい二品ぐらいのシンプルな組み合わせである。そんなわけで、暑いこの季節は、断然茄子やトマトのカレーが多くなります。

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