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近頃発表された日本の出生率は下げ止まりを知らず深刻な社会問題となっています。その状況でも沖縄の出生率は飛びぬけて全国一位です。粟国島の出生率はさらに高く、若い人でも三人以上は普通、中には三十代で十人の子供がいる方もいます。

島という宿命でもあったでしょうが、昔から子供は一番の宝物と考えられ、島民が皆で子供を大切に、時には厳しく子育てする慣習がありました。

島には、子宝を授かる祈願の行事が今でも沢山あります。また、妊婦はタコ、イカを食べると黒いあざの子が生まれる、牛や馬の手綱を跨ぐと過熟児になる、首に手拭をかけると逆子になるなど様々な禁忌も伝わっています。

島は貧しかったため、昔は子供も家の重要な働き手で、農作業、薪拾い、水汲み、弟妹の子守や面倒など手伝いで一日が終ってしまうほどでした。子供達は手伝いをする中で、親の働く姿を見て仕事を覚え、自分たちが自立していくことを学びました。

朝から晩まで手伝いをする子供たちのために、年に一度、旧暦の五月下旬に子供の慰労の日「シュチュマ」があります。その日、子供達は日ごろの手伝いから開放され、親が作った沢山のお菓子を食べて、楽しく一日を過ごします。

親の深い愛が感じられる「シュチュマ」の慣習は、現在でも受け継がれています。


子供の虐待、 近親間の殺人など信じ難いニュースが連日流れています。

いわゆる核家族化して、子育ての経験者である年寄りと離れて暮らしているため、若い夫婦は子育てを育児書に頼り、多くの母親は母乳で育てることを拒否し、仕事で忙しい父親は子供と過ごす時間がないといった、子育てで一番大事な子供とのスキンシップがあまりにも少ないことが大きな問題ではないかと私は思います。また、受験教育には熱心でも、人と付き合うための常識など社会教育には無関心です。親子のコミュニケーションの場である食事も家族で食卓を囲むことが少なくなっているようです。

とはいえ、いつの時代にも子供を生み育てる環境に厳しさはあったはずです。
島の生活も昔とは変わりましたが、共同社会的な助け合いと“厳しさと愛”という子育ての原点がしっかりと引き継がれています。
私の塩工場で昨年から始めた塩作り体験教室に参加した若者たちが、炎天の下、重労働の塩作りに生き生きと励んでいる姿を見ていると、日本の将来も悲観ばかりではないと感じています。



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