No.234









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●前号に「菊芋は花のあるうちにその場所を覚えておき、枯れてから根を掘り出して使う」と書いたが、もちろん花も、花弁をばらして食用菊と同様に扱えばよいし、あるいは、花の形のまま天ぷらにしてもよい。花の裏側だけに薄めの衣を付け、油に浮かし、さっと引き上げる。

▲葛というやつは、やたらに繁殖力が旺盛である。何処にでも蔓延り、暑い季節には見た目にも鬱陶しくて敵わん。だが、藤の花を小振りにして逆立ちさせたような花は、なかなか美的である。赤紫色の豆科特有の蝶形花の集合は、手っ取り早くは、そのまま天ぷらにしてしまえばよい。その他、花房をばらしてから、例によって、甘酢に漬けて利用する。

■幼い頃に小豆餡で包んだ大きな“おはぎ”を食べさせられて閉口した。今もっておしることおはぎは大の苦手だ。小豆なのに〈萩〉は変だし、季節によっては〈牡丹〉と名を変えるのも変だ。萩(文字通り「秋の草」)もやはり豆科の植物である。花も葉も同時に扱いて枝から外し、湯通しして酢と塩などで味付けしてご飯に混ぜ込み、「これが本当のおはぎ」と洒落てみる。

●大待宵草は名の通り夜に咲く。古い歌の文句は“宵待草”と文字をひっくり返して歌い、一般には“月見草”とも呼ぶが、月見草はまったく別の花だそうな。白い花弁のそれとは、儂はまだ出合ったことがない。いずれにしろ、太宰治さんには悪いけど、富士山には全然似合わない。その替わり花を いで皿(料理)に飾ると華やかに映える。食べるにはやはり湯通ししてから甘酢に漬ける。もう一種、色取り取りの秋桜も食べておこうか。菊芋と同様に天ぷらにすればよい。

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