食習慣の違いは、料理法の違いでもある。新しいレセピを憶えると、同じ材料がまったく違う顔を見せるから、暮らしに変化がつき、楽しくなる。異文化交流のプラスはそれだ。そこで思い出すのが、小清水のアスパラガスのこと。
道東の小清水町は、大酪農地帯で、自然が北海道一美しいエリア。惚れこんで家まで借りて家族、友達ともども夏を過ごした一九七〇年代。その関係で私は、ナショナルトラストのオホーツク村ができた際の一号村民である。ここは水と土の改良運動を十年以上してきたから、農産物はとてもおいしい。運動のために無農薬の野菜を会員に売っている。じゃがいもやアスパラガス、玉ネギやカボチャ。この夏アスパラガス一箱一・五キロを取り寄せた。以前は友達と分けたけど、今年はうちだけでまるまる使う。というのは、いろんなレセピがあるので、アスパラガスをドカンとたくさん食べる自信があるからだ。
朝、掘ってすぐ送られた緑のアスパラガスは、水もしたたる鮮度。ロブション風に、ゆでた熱々のアスパラガスの穂先におろしたパルミジャーノをたっぷり載せ、焦がしたバターをじゅっとかける一皿。
次の日は、それより少しカロリーの低い、グリュイエールの厚いスライスを載せて、上からバルサミコ・ヴィネガーをかけてオーヴンで焼く料理。いろんな料理で、二人で四日で使い切った。
レセピは、いまITや本で自由自在。新しい知識を入れれば家庭料理は魔法のように変身する。六月末の小泉首相歓迎のホワイトハウスのディナーのメニュをITで見たら――お皿は派手な金縁でちょっと悪趣味だったけど――野菜に〈ゴマでコーティングしたワイルド・アスパラガス〉を発見。チーズを載せてゴマをたっぷりまぶすのか? 調べよう。
新しい料理はチャレンジングだ。外国の情報は、日々上げ潮のように家庭を洗っている。TV、雑誌、レストラン、外国旅行。それがボーダーレス時代の意味なのに、日本の食卓は、昔ながらの調理法をいまもくり返しているみたい。アスパラガスについてくるレセピも、醤油風味の辛しあえや胡麻和え、肉巻き料理。どうも「小ナミック」だ。これじゃ資金にするアスパラガスの大量消費を期待できない。新しいレセピを載せてダイナミックな食べ方を紹介しようと、私は提案中。
国境なき時代とは、海外旅行や買い物が簡単になった程度のことじゃない。情報公開の広さと速さだ。ホワイトハウスの外国賓客のレセプションや、エリザベス女王の八十歳誕生パーティは、ITで招待客リストから会場の写真、メニュまでくわしく見られる。でも日本は政府も役所も――ホテルやデパートまで――ビクビクものの秘密主義。もっとオープンにしたら面白いのに。情報は私たちに刺激を与えてくれ、人生に変化をもたらすのだから。
|