No.248









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●白玉の歯にしみとおる秋の夜の…まあ、山賊仲間の酒盛りでは(牧水さんのように)静かに呑むべくはずもないのだが、本音を言えば、やはり酒は静かに呑むべかりけりである。夜中に机に向うことの多い儂の場合いは、朝の独り酒が嬉しい。この季節、紫芋のサラダやベったら漬け(皮付き)を酒菜にする。我ながら変と思うが、ほんのり甘いそれは儂の好みの酒質と相性がいい。
▲特に愛用する六個のぐい呑みのうちの一つ(江戸切子)を割ってしまい、凹んでいた。ひょいと覗いた店で、ちょっとだけ気になる江戸切子を見付けたので、取り敢えず押さえておこうと思い、買って帰った。使ってみるとこれがなかなか具合いがいい。嬉しくなってまた酒がすすむ。
■田舎町のデパ地下で酒を物色していると、見知らぬ御婦人から「…どれがいいかしら?」などと相談されることがある。「お好みですから…」としか答えようがない。利き酒の会(一般向けの)でさえ「冷やおろし」とか「大吟醸」の意味を誤解している人を見かける。米が神様だったような国の米の酒…それも世界に比ぶべくもない最高の醸造酒の清酒は、この国のアイデンティティの根幹と言っても可笑しくないはず。誇りを持って呑むべかりけり…である。
●好みが純米系か吟醸系か、あるいは普通酒や本醸造でいいのか――御馴染の日本酒度ほか酸度やアミノ酸度、原料米やその研き具合い、(使用酵母)、生 か速醸か、搾りの段階、生かあるいは火入れの方法等々の情報も瓶の表示で大体分かるのだから、(他人の意見ではなく)自分の舌で確かめつつ自分の好みの酒質を見極めればいいのである。

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