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身体と土とは一つであるという「身土不二」という言葉があります。その土地に根付いた食べ物が、その土地に暮らす人にとって一番美味しく、心身を清め健康になるという考えかたです。沖縄でその食べ物とは、「泣き声以外は全部食べる」という豚です。臓物、皮、耳、足も余す所なく料理し、感謝して頂きます。

豚の処理はまず左首を鋭い刃物で切りますが、その血もボウルに集めます。血は間もなく凝固します。にこごりみたいに固まった血を使って、ニラと赤肉炒めにして頂きます。

日本料理は清楚、淡白、美観といった性格を持っておりますが、琉球料理は豚の尻尾まで料理として使うのが流儀です。今回はひと足先に旧正月料理の話をいたしましょう。

豚の臓物で風雅に作った「中身の吸物料理」。「中身」とは、豚の臓物のことです。難点はその処理の仕方です。愛しい人への手仕事は丁寧に、丁寧に心を込めて仕上げましょう。その処理の仕方で、料理人の人格と品性が見えます。洗い方が不充分ですと、臭いが残ります。どの家庭でも酒量が増えるのが正月の頃。胃壁を守り、酒毒を防ぐには、なくてはならない不可分、不可欠な一品です。

1.小腸や大腸と胃袋に塩を入れて丁寧に心を込めてもみ洗いをし、最後に水洗いします。小麦粉でもみ水洗いをする方もおります。

2.水洗いした臓物におからを入れ、何度も何度もよくもみ込みます。水をたっぷり入れた鍋に、臓物を入れ三十分位茹煮にします。

3.それをこぼし、再度鍋にかけ、沸騰したら水を変えます。これを三回〜五回繰り返しながら茹でます。約四十分位茹でますと、中身が柔らかくなります。粟国では、石唐辛子(ヒハツモドキ・香辛料)の蔓をいれて炊く人もいます。

4.茹煮した中身は食べよい長さの細切りにして鍋に入れ、豚骨だし、かつおだし、酒、自然塩、醤油で味付けします。

5.吸汁は豚骨だし、かつおだし、酒、自然塩、醤油で味をととのえます。

6.別の鍋にはフジ豆(漢名・鵲豆/粟国名・ウフマミ)を炊きます。フジ豆は酒毒、二日酔に覿面に効くといいます。唐竹(イネ科)を入れて炊くと、早く炊きあがります。

7.吸物椀に下からヒハツモドキ、味付けした中身、さらにフジ豆を盛付けして吸汁をつぎ、おろし生姜をいれます。薬味に必要ならば香辛料をどうぞ。

味覚と風土。命の花が凛と咲く粟国の食文化があります。フジ豆は島の農家、小嶺芳子さんや新里チエ子さんたちが栽培し、羊羹や味噌や正月の吸い物用としております。蔓の姿は藤に似て、紫紅色の蝶形花を房に咲かせ、累々と実を結びます。寒中のこととて、見て雄々しいばかりです。
次回は消費量の高い昆布の話。豚肉の処理の仕方と料理の数々をご紹介します。ご期待下さい。
では、どうぞよきお年をお迎え下さい。深謝!


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