疲れて帰って、あるいは一日ハードワークで「あー、もうなんにもしたくない」――ときがあるものだ。夕食のしたくが気が重い。
出前? いまどき、あっても割高だし、おいしくなければお金を捨てるようなもの。インスタントラーメン? あんまりわびしい。どこの家にも買い置きの便利な品がある。うちでも五島軒の缶詰のカレーや、野田岩の冷凍のうなぎなど、お好み手抜きストックがある。割安の品ではインドのカレー、MTRのレトルトもある。
でもフシギなことに、たとえ上等なものがあっても、それを食べる気が起きないことがあるのがニンゲンのおもしろさ。うなぎは重い? カレーは香りが強すぎて気分じゃない、等々。それはその日の気候とも関係し、食欲の振り子を左右に振るのだ――じゃあ、どうするか?
答えは案外かんたんだ。冷蔵庫の中身と、あなたのアタマの中身の総ざらえをすればいい。救いは、おいしいパンと卵。卵があれば、オムレツがつくれる。ふっくらしたオムレツは、フランス人がお客にも出すりっぱな料理だ。チーズをいれてリッチにしてもいいし、パセリやベビーリーフをなげこんで、緑のオムレツにするのもしゃれている。
缶詰のスープがいつもストックしてあれば、キャンベルだろうと、ホテルのだろうと、こういう際にちょっぴりゆたか気分になる。
パスタはいつも安全弁。パスタなら茹でるだけ、それにからませるモノを考えるだけ、そして満足度はとても高い。パスタのレセピは山とある。
冷蔵庫にたらこがあれば、アミが好きなのは、たらこをほぐしてまぜるパスタ。私が好きなのは、チョップしたガーリックと赤唐辛子をオリーヴオイルでいためるソース、マリオのイタリー料理だ。めんどうといっても、この程度の労力はかけないと、その夜はみじめな感じになる。これは人生とてもソン。
男性にも知恵者がいて、アヴォカド丼にするという。「ご飯にアヴォカド、わさび、醤油、イクラを載せるとおいしいよ」。男のコメントは控えめだ。うちでまねてみたら、これは抜群だった! 山安のいい海苔をかけたから、ぜいたくな手抜き料理になった。
別の手抜きは焼きサンドゥィッチだ。テフロン加工をした道具で、パンをパタンと両側からはさんで、炙る。パンにはさむのは、そのとき冷蔵庫にある品。サラミ、ハム、チーズ。もしハムとチーズがあれば、クロック・ムッシュウになるし、ローストチキンが残っていれば、クロック・マダムになる。あとは生野菜があれば御の字だ。
「アミならおそうめん茹でて、チキンブイヨンで山椒だけですんじゃう、これは最高の組み合わせよ」
和風と麺好きの言葉に、私もつり込まれて言った。
「それって、アメリカで感激して食べたわ」
当時は和食の材料なんか、中西部の大学町にはなかった。「おそうめんないから、ヴァーミセリゆでて、チキンブイヨン、ハムとキュウリのスライスで感動したの。夏はコールド、冷しつゆそばにしたわ」
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