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この章で前回までにご紹介しました谷 克彦、武者宗一郎両氏は各々物理学者、理学博士として、また健康を願う一人の人間として、自然塩への熱い思いを自然塩復活運動に向けられました。
今回ご紹介します平島裕正氏は、医学博士として四国女子大学教授、三野病院院長を歴任され『塩』『塩ふしぎなはたらき』『日本人の健康と塩』『育児いまむかし』『新版育児学』など多数の著書を執筆され、特に小児学科専門の医者として、また一人の人間として、専売されていたナトリウム分約九九・五%でミネラル分を殆ど含まない化学塩に対して人体への影響を危惧し、“いのちの源泉”である塩の成分比(ミネラルバランス)を極端にゆがめた内容の塩には、疑問の余地なしとは言えませんと、自然塩復活への強い提言をされました。
昭和四十九年に開催された『食用塩シンポジュウム――専売塩で日本民族は滅びるのか』においても次のように話されています。
「微細な成分の存在価値は、それが微細であるだけに、なお重要です。すべてはバランスの上にたっての価値判断が大切です。
必要な塩分を与えないと家畜は子を産みません。家畜用の飼料には、鉄、銅、コバルト、ニッケル、ヨード、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを加えた固形塩が作られています。
かってフィリップ六世統治下の中世フランスでは、塩に重税をかけたためか、後年出生率の低下が長く続いて悩まされた史実があります。
塩が世の中すべての問題ではないし、塩だけで世の中のことがすべて解決されるものではないにしても、塩がかなり重要な意味を持つ食物であることは否定できないと思います。
ある種の思想、価値判断の基準をどこに置くかという点をめぐって、なるべく自然のままの成分と、それなるが故の味や作用を残して、手作りの、時間の重みを含み、汗の結晶を感じさせる食用塩を、自由にいつでも入手できるように、各人の嗜好が、随所に生かせるようにあってほしいと願うものです」。
私自身も平島先生から、塩についてのいろいろなお話をうかがい、多くの著書も読ませていただきました。今、私がしっかりした目標を持って塩作りにまい進できているのも先生のおかげだと感謝しております。その先生も昨年に他界されました。ご冥福を祈るとともに“体にいい美味しい塩”を作ることが私の使命であると報告をさせていただきました。


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