No.243










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●或日突然、棚の書物を発作的に処分することがある。七年か八年に一度…あるいは十年に一度かも知れない。先月、儂は思い切ってダンボール箱二十六個分を処分した。捨てかけて、思い直して元に戻す本もある。例えば『アリスの国の不思議なお料理』他、似たような童話系料理本四冊も、そんな風にまた生き長らえた。何れもふらりと入った書店で発作的に入手したもの。皆一度も開かれること無く、書棚の隅っこで眠り続けていた。池波正太郎の小説に出てくる料理をピックアップした本はしっかり読んで、その幾つかを真似てみたことはあるが、概して儂はグルメ本の類いには興味がない。ルイス・キャロルの二冊のアリス『不思議な国のアリス』と『鏡の中のアリス』が、やはり書棚の片隅でアリス自身のように(たぶん夢でも見ながら)眠り続けていた。共に読んだ記憶はないが、開くと処々ページが折ってあったりするから、一度は目を通しているに違いない。何だか面倒臭い本だ。それで
『アリスの……お料理本』(著者はルイス・キャロルではない)もアリス二冊と並べて生き残らせることにした。アリスが大きくなったり小さくなったりしながら“旅”をするそのおはなしをピックアップしつつ、そこに登場する飲食物の材料や作り方を解説している本なのだ。女の子が喜びそうな甘味やスープやサラダの類は儂には不向きだし、ラムレッグのローストやプディングならあれば喜んで食べるけれど、今や完全に和食党となった儂が、わざわざ自分で作ってまで食べたいとは思わない。ただ、小説などに描かれた食味をピックアップしてそのレシピを解説する本がある…ということが、何だかちょっと面白いなァ――と思っただけなのである。

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