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塩煮魚、塩煮(マースニー)の話をいたしましょう。マースニーとはアイゴの塩煮のことです。海のうしおで煮上げたような涼味、清楚高雅に仕立てたいものです。魚は新鮮さが命。一にも二も新鮮な魚を選ぶのが料理の基本です。鰓が赤いものが新鮮、鮮度が落ちると鰓が赤味をおびなくなります。
スーパーや店頭に並ぶ魚の新鮮度を判断する方法を伝授しましょう。

一、鰓を開けてみて、赤味が強い物。
二、体の色艶が鮮やかで、光沢がある物。
三、目が清く澄んでいる物。
四、体を指先で押してみて、へこまず、跳ね返っ
  てくるような弾力のある物。
五、頭を持って、魚体を水平にした時、体が硬
  くて曲がりにくい物。
六、腸が出てない物。
七、鱗がはげていない物。 
八、不快な臭いのしない物。

腸が出ていたり、鱗が取れていたり、不快な臭いの魚は傷んでいるので買うのを止めましょう。 買って来た魚の鱗を取ります。アイゴの鱗は細かいから削ぐような感じです。次にお腹を取ります。アイゴは海草を食べるのでお腹の汚物は特に臭いです。仕上がりが良いのと塩味がしみこむために、皮面に包丁を入れます。さっと水洗いするか、塩水で洗います。魚を洗うのはその時だけ、何度も水洗いすると鮮度と味が落ちますからご用心下さい。両面に塩を振りかけ、一時間後に、身をひき締めるために、熱湯に手早くくぐらせます。

鍋にひたひたになるまで一番ダシを入れ、アイゴを入れます。鰹節のダシを引く時、火を止めてからすぐに漉さないで、上澄みを待つつもりでそのまま置くと、これがかえってよくありません。折角のダシがまた鰹節に戻ります。しかし、少量の塩を加えると皮膜のおかげで味が戻りません。だからといって、最初から塩を入れるとダシを吐かないからやってはいけません。強火で十五分ぐらい炊く。沸騰すると、煮加減を見ながら、塩ひと摘みを落とし、塩加減を見ます。表面に浮いてくるアクをすくい取ります。落し蓋をして十五分ぐらい弱火で炊きます。素朴な味が命。煮立て過ぎると、アイゴの持ち味が強く出すぎてくどい味になります。出来立てに生姜を添えて頂きます。

火加減、煮加減、味加減、料理は全て勘のよしあしで決まります。それは全て愛しいものへの愛情表現。心を込めて、美味しくなれ美味しくなれと呪文を唱えるように作ると良いでしょう。

心を添わせ、愛しい者のために励ましつつ生きるのが人の世。深い愛情の積み重ねを日々の生活で馥郁と味わう。手間をかけることは愛情をかけること。それが料理の基本。愛情を形にするのが手仕事です。

料理は生き物の命を頂きます。命を頂くことで命と命の交換がなされ、命の連鎖となります。感謝して頂きましょう。
クワチーサビラ(いただきます)。


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