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改マル年ニ木炭トゥ昆布飾テ心カラ姿若クナユシャ
(新春を寿ぐには木炭と昆布を御供えし、心身若返ることを願いましょう)
――旧正月琉球の吉祥歌――

沖縄では旧暦元旦に神仏に赤紙・黄紙・白紙一式と昆布で巻いた炭、神酒、強飯と所によっては塩を御供えします。炭は山の象徴。植物の持つ輪廻転生、霊力に再生のエネルギーを借りたことへの感謝なのでしょう。昆布は海の象徴であり、ニライカナイ(海の彼方にあるという理想郷)からの貴重な贈り物。人間が頂く前に神様へ供え、感謝の念を伝えたのでしょう。

赤紙は太陽、黄紙は月、白紙は星の象徴。三神(太陽・月・星)への感謝と五穀豊穣、家内安全、無病息災を祈願するそうです。見えない世界に畏怖を感じる沖縄人。大昔から現在まで、色、物、形に意味を見出し、物事の道理を導きだした精神は今日も営々と引き継がれています。

このように昆布の採れない沖縄でも深く縁のある昆布。それには深く秘められた歴史があります。海上は道であり、「昆布ロード」があります。琉球王府時代、松前・江差(北海道)で採れた昆布は北前船に乗って、日本海を下り、北陸・敦賀を経て、下関海峡に入り、天下の台所大阪に集積されました。そこから東西に分かれ、西は薩摩(鹿児島)を経由し、琉球へと運ばれました。白雪厳冬の北海道産昆布が、エメラルド色のリーフに囲まれた常夏の小島で日常食として定着していきます。海路がつなぐ食の不思議さ。帰船は、黒砂糖、中国からの薬が富山へ。その縁のお陰で、特有の甘さとコクのある味わいのある天下一品の昆布が食べられているわけです。沖縄用は、「さおまえ」と言われる根室産の若い昆布。それは出汁用ではなく食用が主です。昆布の消費量も全国トップクラス。日本全国津々浦々、ここ沖縄でも昆布巻きが正月料理の定番ですが、祝の席、出産、結婚、人生の門出を祝う縁起物で果報物の料理といえば昆布炒です。

1.三枚肉を茹で、長さ五センチ、幅二センチ程の薄い短冊に切ります。
2.昆布はさっと水洗いし、しばらくたってから千切りにします。
3.かまぼこ、粕平(かすてら)は五センチの短冊に切ります。
4.鍋で1の肉を炒め、脂がでたら、2の昆布少量を入れ炒めます。昆布がしんなりしてきたら、水で戻した千切り大根を追加して炒めます。さらに3の
かまぼこと粕平を加えてよく混ぜます。
5.1の茹で汁で鰹ダシを作り、それをCに加え、ごく少量の砂糖、醤油、味醂、塩で味を調え、焦げ付かないよう攪拌しながら中火で炊きます。

昆布こそ命の栄養。口福無限の昆布。乙な味をご賞味あれ。先祖が工夫に工夫を重ねた昆布料理を頂きながら長寿を願いましょう。


※粕平〈かすてら〉 白身魚のすり身に卵黄を溶き、じっくりすり混ぜ、塩、味醂、砂糖で味付けし、型に流し込んで蒸したもの。


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