No.250









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●十個で五十円や一個で五百円など、いろんな鶏卵がある。どれも玉子は玉子、別にいいさ…と儂は思っている。豆腐もまた然りだ。下山後、そこら辺の縄暖簾で、冷奴や湯豆腐を菜にイッパイやるのが定番だ。そんな豆腐は当然ピンキリのキリの方で、スーパーの目玉に使われるような醤油をザブザブとかける。酒もキリのキリだから、すべてがそれなりのバランスで違和感がない。
▲デパ地下の豆腐売場を覗くと、何やら勿体振った名を印したものが多い。「何か勘違いしてないか…そんな暇?があったら中味をもっとガンバロー」といいたくなる。偶さか出掛けた先で豆腐を買って帰った。狸も徘徊するセンバ山の豆腐…デパートの熱心な口説きも蹴って孤高を保つ小店である。シンクロニシティとはオソロシイもので、その直後、二度もその店の大きな笊豆腐(一笊が七丁分)などを人様から戴いた。こりゃあ豆腐パーティー(ただ集まって食べるだけ)をやるっきゃない。
■旨い豆腐なら何もつけなくてもよいが、時に、愛用のさらりとした千葉産の醤油を、スポイト一滴分程落しながら食す。豆腐によっては微妙に、金沢や小豆島の醤油も使い分ける。同じ豆腐が馬鹿旨の時もあれば「ムム?」という時もあるが、それはそれで仕方ない。百%同調するのではないが、儂にとっては気になる豆腐店の一つではある。近所のお母さんが小鍋片手に買いに行く雰囲気でもないので、どうやって商売しているのかと思ったら、近頃はやりの「ネット」とかいうやつで成り立っているらしい。実は今も、その豆腐と茨城の酒
〈山桜桃〉が、冷蔵庫の中で「早うせい」と、儂がこの原稿のペンを置くのを待っているところなのだ。

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