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今年九月十五日で「粟国の塩」は、おかげさまで創業十四年目を迎えることが出来ました。
同時に私の塩への取り組みも三十四年目となります。多くの方々のお力添えに感謝いたします。

一九七四年、「塩業近代化臨時措置法」が施行され、わが国は世界で初めて「イオン交換塩」を食用として国民に供することに踏み切りました。その三年後、私は「自然塩復活運動」に参加し、そこで恩師・谷 克彦氏をはじめ三人の学者に出会い、私の塩作りの人生がスタートしたのです。「塩と人間の健康」という課題のもと調査、研究、実験を繰り返し、昔の塩作りをそのまま復元するのではなく、塩は本来どうあるべきかというかという原点に立ち戻り、「身体にいい塩」を作りたいという強い信念が力となって、様々な難関を乗り越えて「粟国の塩」が今ここにあると思っています。

すべてのものづくりに於いて一番大切なことは、何のためにそれが在り、何のためにそれを作るのかを考えることです。昔から日本人は優れたものづくりの文化を築いてきました。そして戦後の荒廃した日本を救い、繁栄をもたらしたのも、ものづくりの力でした。

その結果、日本は経済大国にはなりましたが、大量生産、大量消費ばかりが先行してしまい、一番大切なものづくりのこころをどこかに置き忘れてしまったのです。食について言えば、様々な偽装問題、危険薬品の混入などの事件が後を立ちません。食で一番大切な安心・安全を忘れてしまい「安全・安心な国、日本」は、もはや神話となりつつあります。

長寿社会になり、健康への関心が高まっていますが、本来自然の食品から摂る事が出来る栄養素も、化学で作られたサプリメントが巷に氾濫しています。安易に摂取できるのは便利ですが、問題は手間はかかっても自然のものから摂ることを忘れてしまうことだと思います。

塩に関しても、食用塩協議会を中心に改革が進められていますが、問題がたくさんあります。例えば、国産海水一〇〇%と表示しながら、実際は輸入原塩を使用している商品がたくさんあります。また、ミネラル分を調整するためカリウムや炭酸マグネシウムを人工的に添加しているにもかかわらず、表示をしない危険な商品もあります。

企業がマネーゲームに夢中になり、ニセモノの商品が溢れ、ものづくりのこころ、さらにはヒトのこころまでも変えてしまいました。更なる不況になれば、ますますニセモノ商品が増えることになります。
本来のものづくりとは、本物を作ることです。ものづくり日本を再生させるためにも今こそ、ものづくりに志を持って取り組む若者が増えるようなものづくり教育が求められています。


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