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大豆は豆科の一年草でアジアや中国が原産です。大豆の伝来は、仏教の伝来と同じで、奈良朝時代に伝わったとも、一説には弥生時代ともいわれております。琉球には中国との交易を通して、独自ルートで伝わったのでしょう。

シルクロードは東西の交易の要。道は命の道であり、食文化の別れの道でもあります。食品加工の文化は東西に分かれ独自の発展をして参ります。
西では主に牛、山羊、羊などの乳を搾り、動物タンパク質を発酵させたチーズやバターなどの乳性食品が発展します。

そして東は畑の白乳、豆腐がその代表です。
豆腐は植物性のタンパク源としては優れておりますが、消化しにくいのが難点です。ただ、発酵させることによって、消化の良いタンパク質へと変わります。トルコ系の遊牧民が保存食として作っていた乳腐(ふにゅう)が中国から琉球に伝わり、琉球王朝で花開いた典雅な高級食品が「豆腐よう」です。泡盛を使い豆腐を発酵させるという、琉球料理人の英知を集めた智慧の結晶であり、琉球王朝時代は門外不出、王府直伝、秘伝中の秘伝の品で、貴族の間で大変珍重されました。

豆腐と米麹と泡盛という、発酵食品同士のコラボレイションが相乗作用を生み、味に更なる深みを添えます。香ばしい風味、からっとしてねっとりとし、とろけるような絶妙の味、上品で高貴な味覚は、酒客の舌を唸らせ、心を掴んで離ざす、虜にしてしまいます。舌の上で崩れ、口福無限の曼荼羅が広がります。黴、その妙縁のもたらす人生、至福の一物。“東洋のチーズ”といわれ、当代随一の珍味とされる所以です。

米麹を泡盛に漬け、米麹がやわらかくなったらすり鉢ですり潰してたれを作り、泡盛で戻した紅麹を入れ、塩と砂糖で味を整え漬け汁を作ります。豆腐は三センチ角に切り、一個ずつ塩を丁寧にまぶして荒めの笊に豆腐を広げて風通しのよいところに置いて陰干しします。時々豆腐を裏返して乾かします。三日〜四日ほど乾かす作業をいたします。豆腐の表面が黄色味を帯びてきたら高濃度の泡盛(三十度以上)で三回ほど丁寧に拭きます。その間に保存用容器の甕をよく洗い、天日に干してから、泡盛で消毒いたします。それに豆腐を入れ、漬け汁を入れ密封して熟成を待ちます。三か月程からは食べられます。五か月目が至高の美味です。作る時季は、高温多湿な夏場は不向きです。北風の吹き荒ぶ冬場がよろしいです。

もっと簡単、ご家庭でも作れる「味噌豆腐よう」をご紹介します。豆腐一丁を四つ切にしてうす塩を振り、笊に並べて一日〜二日風通しのよい所で陰干しします。豆腐が乾燥し黄色くなったら泡盛で洗います。味噌に泡盛、砂糖、味醂を合わせて味を整え、タッパーなどの密封容器に敷き、豆腐を入れ、上からも味噌をかけて蓋をして密封し冷蔵庫で一か月程熟成をさせて出来上がりです。
あつあつのご飯に、酒の肴に中々乙なものです。豆腐を焼豆腐にして、味噌に漬けてもよろしいです。


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