No.257







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●「煮(に)る」という行為を、「炊(た)く」などというアホな奴がいたりして困るのである。「炊く」とは、仕上がりに汁気がなくなるような調理法(炊き干し法)のことである。強飯に対する固粥(かたかゆ)あるいは姫飯(ひめいい)…すなわち我々が普通に食べている“ごはん”をつくる方法である。

▲お米の調理のあれこれを考えてみる。先ずは素朴な粢(しとぎ)というやつ…水に浸した米を杵で搗(つ)きつぶしてドロドロ状態にしたもの。これを丸めて熱すれば団子や餅状になる。古い時代に(たぶん里芋などと一緒に)南の方から持ち込まれたに違いない。次に、蒸すこと…やはり一部の東南アジアの糯米(もちごめ)栽培地帯が発祥のようだ。日本でも弥生の末期からはじまって平安の頃、ハイソのクラスで(特に儀式用に)一時期盛んに行われた強飯がそれだ。赤飯その他の「おこわ」として今に残る。本命は炊く…はじめは陸稲の粳米(うるちまい)を、後に水稲のそれを炊き干しに。南アジアの一部島嶼(とうしょ)部が元祖(?)、半殺しにして木の葉で包んだりして…これはキリタンポや御幣(ごへい)餅やおむすびに繋がるかな(?)。日本の他、揚子江(ようすこう)以南の中国や台湾も同様の炊き干し地域らしい。それに煮こぼし…いわゆる湯取り法である。これは雑穀の調理法だ。雑穀や小麦粉食品を常食する地帯、つまり揚子江以北の中国や朝鮮半島で行われた。インド以西の諸国も湯取り法だ。一部日本でも行われた。米食の進化に伴い炊き干し法に移行するらしい。もっと細かに分類できるけれど、大雑把にいえばこんなところだろう。

■お米とどんな風に関わってきたか…を考えると、ご先祖様が、いつの時代にどこから(この行き止まりの島国へ)渡ってきたのかが垣間見えるようで、結構おもしろい。

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