キュ、キュ、キュ、大きなふきんを左右にひろげ、両手で持ってミート皿を拭く。その音も、さっと拭けるのも、ブルーと白の太いストライプも、気分が明るくなる。
「最初どうかな、と思ったけど、イケアのこれ、具合いいわね」私はアミに言った。
「そうなの! リネンじゃないな、って思ったけど、この大きさがすてき」
スゥェーデンから来たイケアに買い物に行った人なら知っているけれど、シンプルなデザインの家庭用品が、たいへんリーズナブルな値段で売っている大型店。いまは港北と船橋、神戸に三店ある。
ふきん、つまりキッチンクロスは、あるときイケアで、くるっと丸めて四枚ひとかたまりで、たった百九十九円と値札がついていた。Elly(エリー)という名だ。手にしたアミに「リネン?」と訊くと、「コットンよ」
ちょっと失望顔の私に「この値段なら試してみる価値があるんじゃない」アミが言って、試しに買ったのが、当たった! 大きい、模様が白地にストライプや格子でラブリー、吸湿性がいい。そのよさに対して、一枚当たり五十円とは、すごい安さだ。
ほんとを言うと、私はリネンのふきんがいちばん好き。ミュンヘンのベッテンリッドのリネンのクロスは最高だけれど、リネンは高い。イケアには、Admete(アドミテ)という名のリネン百%を二枚八百九十九円で売っている。イケアだとこれはとても高く感じる。その日はエリーだけにした。その後、結局アドミテも買った。
「おふきんて、フシギなものじゃない?」
私は拭いたグラスをしまいながら、アミに言った。
「うちは『暮しの手帖』のおふきん一辺倒だったでしょ。あれも日本製では大きいんだけど、外国製にくらべれば小さ目、それを半分に切るひともいるわ」
ある夏、軽井沢の姉の家で暮しの手帖のおふきんを半分にカットにして使っているのを見て驚いた。私は思わず、
「れれ、半分に切っちゃうの?」
「だって、お茶碗はこれでいいのよ」
なるほど、ご飯茶碗とお椀、お小皿の食事なら、それでいいのかも、と思ったものだ。ふきんのサイズは食生活の習慣と関連している。
ベッテンリッド(BR)のリネンとイケアのリネン(アドミテ)、イケアのコットン百%(エリー)、暮しの手帖(日東紡/コットン&レーヨン混紡、縮小率十五%)の四枚を重ねると、この順に大きいほうから小さくなっていく。
BRとアドミテは七十×五十センチ。エリーは六十五×五十、暮しの手帖は七十五×四十だが、使っていると六十五×三十八に縮む。ミート皿はたいてい二十七センチあるから、大きいクロスが使いいい。私は永年、手帖社のおふきんを愛用してきたけれど、ここへ来て輸入ものが増えて、幅広・大判でしっかりした布地の外国製に傾きつつある。
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