No.262








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●取り留めもなく酒を喰らいつつ、年を跨ぐ。何の祭りごともせぬまま、ノホホンと元旦を迎える。遅めの朝食に雑煮を喰らう。雑煮を喰らいつつ「ああ、やはり正月だな」なんぞと間の抜けた感懐を抱く。人によっては「うちの田舎じゃ元旦(あるいは三ヶ日)に餅は食わぬが掟ぞ…」というケースがあったかも知れない。儂の場合は粗(ほぼ)三ヶ日は雑煮を欠かさない。雑煮を喰らいながら「また一年生き延びてしまった」なんて思う。古い世代の所為か、年取りを意識するのは自分の誕生日ではなくて、正月なのである。▲土地土地にいろんな雑煮があるらしい。以前、雑誌か何かで各地の雑煮の写真を見たような気もするけれど、よく覚えてはいない。餅が丸かったり四角だったり、汁が味噌仕立てだったり、具材も「所変われば品変わる」ってなわけ。強いて言うなら餅と里芋と青菜の三点セットが基本なのだろう。儂の場合は澄まし汁に鶏の笹身・小松菜・蒲鉾と焼いた四角い切り餅…それに柚子とか三ツ葉をあしらった雑煮で育ったから、粗それを踏襲している。近年鶏の代役に鴨が登場することも多い。出来るなら一度は鶴肉で試したいのだが、無理かしら? ■中太両口の箸の形は儂の好みじゃないけれど、決まり事だから、こんな時は純情に柳の雑煮箸を使う。柳は「家内喜(やなぎ)」の縁起、素木は汚れの無さを、両口は神人共食の表現なのだそうな。原稿を書きながら何んで“雑”煮なんだ…と悩む。いい加減・粗末・荒っぽい・取るに足らない…というイメージが枡目用紙の上に踊った。神様への供物を一つ鍋でごった煮にしたのが始まりかも知れぬが、雑の字は新年の祝い膳に似付かわしくない(正月早々また阿呆な御託を並べてしまった)。

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