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スーパーの調味料売り場に並ぶ塩の種類は驚くほどです。パッケージは似たり寄ったりですが、値段には大きな幅があります。どれを選べばよいのか迷ってしまう方も少なくないと思います。
現在、日本の製塩所の数は、大量生産の大規模な工場から手づくりといわれる小さな製塩所までを含めて六百以上あるといわれ、さらに中国、韓国、モンゴル、ベトナム、オーストラリア、ドイツ、フランス、イタリア、ポルトガル、メキシコ、ペルー、ボリビアなど世界中から岩塩、湖塩、海塩などの様々な種類の塩が二千以上も輸入されているというのが現状です。

塩の種類が多岐にわたることで選択の幅は広がりましたが、どの塩をどう選べば良いのか選ぶ基準が明快ではありません。塩の品質には大きな違いや差がありますが、パッケージに書いてある表示や情報は、現在の法規制の基準が甘く過剰な広告コピー表現の商品が氾濫しています。例えば、以前、メキシコやマレーシアなどから輸入された原料塩を使用して日本で再製塩している商品について、その輸入国の表示がされずに国産品としていたため十数社の会社が指導を受けました。法規制については食品と同様に、栄養成分などの表示義務はあったものの、塩独自のものはなく、必要不可欠な表示は「無機物」という特異的なものだけでした。

三年前の二〇〇五年、やっとのことで厚生労働省と東京都の肝いりで、塩の信頼と表示の統一に向け「食用塩公正取引協議会準備会」が発足し動き出しました。さらに塩工業会・塩製造業者・塩元売業者などが参加して意見交換を行い、二年間の試行錯誤の末二〇〇七年に暫定案がまとまり、「食用塩公正取引協議会」が発足しました。検討された内容は多岐に渡り、原料、製造方法、栄養分析など細かな表示義務が決定されました。特に原料や産地の偽装が起こらないよう原料、製法に関しては海水をどのように製塩するか、また輸入原塩、岩塩、湖塩を使用した際の表示義務や輸入国名の記載が義務付けられ、さらに製造工程に関しては、イオン交換膜の使用、真空蒸発管の使用、煎合釜の使用など約十五分類の中から選び表示を行うことになります。その結果、食品表示の中では最も厳しい義務表示となりました。昨年四月に決定されたこの表示義務は、二年間の猶予期間を経て来年二〇一〇年四月から施行されます。

これが実行されると、消費者は安心で安全な塩を選択できるようになると思います。また、日本の塩の安全さを海外に訴求することで、塩の国際競争力が上がっていくことも期待されます。

日本の国際競争力は世界に誇れる物作りの技術にあります。塩もまたそのひとつとして、私も真摯な物作りの心で塩作りに取り組みたいと考えております。ともあれ、この表示義務が完全施行され、皆さんが、安全で美味しくしかも健康に良い塩を正しく選ぶことが出来ることを願っています。


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