No.263








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●稲田の広がりを切り裂くバイパスに添って、美事に穂を立て茂る、雑草に気付いた。図鑑を引き、それが稗であることを知ってヒエッなんてね。白い飯を儂は坊さんを真似て白的と呼ぶ。その白的に替えて月に何度かは糠付きの米(玄米)を食う。麦飯も食う。粟や稗はまだ試していないけれど稷入りの飯も食う。白的ばかり続くと物足りない気がする。白と米を並べると粕の字になる。カスだぜ!「粕を食う」っていい意味じゃない。米を稷粒程に削って醸した酒、大吟醸がある。儂の好みは、精米歩合が七十〜六十%程のアル添なしの酒である。米の旨みがしっかり保たれている。▲以前、湯の宿で稷飯を馳走になった。黄色の粒々が鮮やかで、しかも旨い。家でもやりたかったが稷の入手方法が分からなかった。やがて自然食品の店が出現して、それが可能になった。今や雑穀ブームだそうで、何処のスーパーの棚にも各種の雑穀が並ぶ。ある山域へ向かう途中、かつては超の字付きの鄙な駅を経由した(今は新しい鉄道が敷かれ、その必要がない)。鄙な駅の近くに稷入りの切り餅を売る鄙な小店があった。それがお気に入りとなった儂は、通る度に必ず買った。もう店もない。他に入手方法を知らず、食べたくてよく夢に見た。自分で作ればよいものを…懶だから仕方ない。久々に上京し序でにデパ地下を覗いたら、食品雑貨コーナーで偶然に稷餅を見付けた。色味が薄いので店員に混合率を調べ(製造元に電話)てもらった。「稷が三割だそうです。近々、八割のものを作るそうです。混合率を増すと食感が悪くなるので難しいとか…」と彼女は伝えた。い

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