42







前号では塩の安心、安全のためにパッケージ等への表示義務の統一に向け、厚生労働省、東京都を中心に塩工業会、塩製造業者、塩元売業者などにより「食用塩公正取引協議会」が発足。原産地、原料、製造方法、栄養分析などの細かな表示義務化が決定され、二〇一〇年四月の完全施行を目指して動き始めていることをご報告しました。

しかし、この法令は塩の安全、安心のために大きな一歩であることは確かですが、まだまだ完璧なものではありません。今回は、私が心配していることをお話したいと思います。

現在、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カリウムを添加した塩が販売されていますが、これらの添加物を使用した塩への規定はありません。
本来自然の塩に含まれるミネラルは塩化マグネシウム、塩化カルシウムです。炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムを添加するのは、塩をサラサラにするためと、マグネシウム、カルシウムの分析値(含有量)を多くして、いかにもミネラルが多く含まれているようにするためだと考えられます。

炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムは一般的には乾燥剤に使われ、水に溶けないため、当然ながら身体にも吸収されず、効用もないばかりか人体にも悪影響があると考えられます。これが添加されているかどうかを見分けるには、コップの水に塩を溶いてみると一目瞭然です。添加物のない塩はやがて透明になりますが、添加された塩は水に溶けない浮遊物が浮かび白濁して見えるのです。

またカリウムを添加するのは、塩化ナトリウムの分析数値を下げるために利用されます。最近流行っている「減塩塩」または「低ナトリウム塩」がこれに当たります。適正値のカリウムが含まれた塩は、カリウムによりナトリウムを体外に排出し、体内のミネラルバランスを正常に保つ作用をします。しかし、一定量以上のカリウムを摂取することは、脱力感、不整脈などの高カリウム血症など病気の原因ともなります。

現在、これらの添加塩も自然塩として販売されていますが、これらの塩が何の規制も受けずに販売されていることが問題だと考えます。

真の安心、安全のために、そして消費者の信頼を得るために、食用塩公正取引協議会は申請文書による認可だけでなく、工場の立ち入り検査を行って認可することこそ必要なことだと考えます。

塩は人が生きていくために不可欠なものです。それだけに決して偽装などがあってはならない、本物でなければならないのです。日本が百年に一度といわれる現在の状況を乗り越えられる手立ては、世界に誇ることが出来る真摯な「ものづくりの心」だと確信しています。日本産の塩が国内はもとより世界でも認められるためには、更なる厳しいチェック体制を確立させ、安心、安全で美味しく身体によい塩を作ること以外にないと考えています。


.
.

Copyright (C) 2002-2009 idea.co. All rights reserved.