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メタボ検診などの健康チェックで、血圧などの数値が高いと減塩を指導されます。減塩が健康な体になるための常識であるかのように、医師からマスコミまでが口をそろえての大合唱です。
さらに店頭には、減塩醤油、減塩味噌、減塩梅干、減塩塩などが売られている有様です。

なぜそうなってしまったのでしょう。それは一九五三年にアメリカの高血圧学者が、ネズミを使った実験結果を発表したのが元といわれています。実験とはいえ、常識ではありえないほどの塩分量をネズミに投与した結果でした。さらに、アメリカの学者が、日本の東北地方に高血圧症が多いことに着目し、原因を塩の摂取量に関係あると発表したのです。確かにその当時、東北地方では塩の摂取量が一日約二十七グラムとかなり多かったため、この学者は、高血圧症の原因と塩の摂りすぎとを単純に結びつけてしまったといえます。いまや、これらは完全に否定されていて、高血圧症に対する塩悪者説の根拠はなくなっているのですが、厚生労働省は一日の塩分摂取量を、十グラム以下にするよう指導しています。

確かに日本人の塩摂取量は、ほかの国に比べると数値的には多いといえます。それは、気候風土、食生活の違いが影響しています。塩分は汗によって体外に排出されますが、湿気の多い日本に比べ、湿度が低い欧米では、カラッとしていて汗をかく度合いが少ないのです。また、ナトリウムを多く含む肉食中心の欧米人と菜食中心の日本人の違いです。日本人は、野菜に含まれているカリウムの働きにより、ナトリウム分が体外に排出されてしまうので、バランスをとるためにも塩分を必要とするのです。ですから、塩分摂取量を欧米並みにしようという国の考えは理解に苦しみます。

過ぎたるは及ばざるが如し、食べ物はバランスよく摂ることが大切で、偏った食事や、過剰な摂りすぎは良くないことは当然です。脂肪、砂糖などの甘味料などは、体内に蓄積されますが、塩は体内に蓄積されず、汗や尿などによって体外に排出されるという性質を持っています。体を使うときや、暑い日には、多少多めに塩分を摂る必要があります。

また、塩分を摂り過ぎるとのどが渇き、水が飲みたくなるのです。健康な体は、塩分を自然にコントロールしているのです。塩は調味料としても不可欠ですが、人間の健康な生活のためにも大切な働きがありますが、量の問題で言えば、少ないほうが問題なのです。
塩分が足りないとどうなるのかについては、次回お話しいたします。


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