文字どおりには「雨天への注意」だが、ウェブスターを引くと、野外の行事が雨で流れたら次に使える小片が切符に添えてあるとか、注文商品が売り切れていた場合、次に優先配送する、というふうに使われるとある。
でももっと普通には、友達に「これ、レインチェックよ」と、駅で会えなかったら次はコーヒーショップで待ってるわね、と二重念押しをすることだ。
私たちの暮しでも、すこし内容はちがってもレインチェックが必要だ。たとえば、日用品や食料品はストックがあるか? 買った品はいつでもあなたの家まで配達されるか、などで「備えあれば憂いなし」と同義語だが、レインチェックというほうが楽しいし、ピンとくる。備えというと、なんだか災害や戦時みたいで灰色っぽい。
なぜ今月、レインチェックをとりあげたか――というと、実は私がとつぜん背中をいためて(寝たわけじゃない)大事をとって二週間ほど、急がない外出をひかえたせいだ。
「ママ大事にしてて! アミがみんなやるから」
「ダイジョブよ、病気じゃないもの」という私に、
「だめよ。お料理は立ち仕事だし、クルマは乗り降りと、シートのカーヴが背中にわるいのよ」ときびしい。そして「コンピューター、何時間も座り放しもよくないのよ」と追い打ちだ。
たしかに専門医に訊くと、若い人でも同じ姿勢を三十分以上つづけないほうが背骨の健康にいいそうだ。デスクワークで前屈みの姿勢がわるいのは常識だ。これは私は大丈夫。というのは、ノルウエイのバランスチェアという、姿勢をよくするイスをもう二十五年は使っているから。
畳では、足を前に投げ出してすわるのがよくないと初めて知った。私はよくやるのだ。プチまちがいでも直さなくちゃ。
一方アミは、急に二人分の家事でいそがしくなった。夜更かしの私の家では、電気は午後十一時から朝七時までの夜間割引料金にしているから、夜中の洗濯と乾燥、皿洗い機の仕事がある。それは夜更かし好きの私の担当だった。アミは反対に早寝早起き。
そこで家事の省エネルギーと上手なエネルギー配分を狙うと、答えは配達とクゥィック料理になった。
クゥィック料理は、子育て時代にやった私のおてのもの。アミが出ている間に、厚い鋳鉄のコプコのお鍋に、バターとオリーヴオイルをいれ、玉ねぎとポテトの厚めのスライスを敷き、生のタラのカットをのせ、間にバターとパセリをたっぷり。それを二段くり返す。弱火で四十分ほど蒸し煮で、完成する。
「ママ、エライ! これ子供の頃からの大好物なの!」アミは感激し、私は手持ちシンプルクッキングの数あるレセピに感謝した。
簡単チリ・コン・カーンもある。本当は赤い豆を水に浸けてから煮て、ひき肉とチョップした玉ねぎ、トマト、チリパウダーで煮込む数時間料理だ。簡単は、缶詰のベイクドビーンズにキャンベルのトマトスープ、炒めたひき肉と玉ねぎにチリパウダーでできる。
夕方、コンピューターに向かうアミが訊いた。
「来週の地球人倶楽部の注文、何にする?」
「よかったわね、うちは地球人倶楽部があって。注文すれば届いてくるんだもの」
私はアミに言って「神に感謝!」と、天井灯をさっと指さした。これはカニグスバーグの『ベーグルチームの作戦』のママの真似だ。彼女はキッチンの天井灯に神様が住んでいると信じていて、何かあると、そこを指して祈ったり、感謝したりする。
一九九六年五月から欠かさず頼んでいる地球人倶楽部はうちのライフラインだ。オーガニックの食品を前の週にオンラインで注文し、きまった曜日にデリヴァリーしてくる。
でもこう書いただけじゃ、ありがたみがピンとこないかも。こうなのだ。一においしい、二にミルク、チーズ、パン、野菜、魚、肉からオリーヴオイルも麺も、調味料から石けん、化粧品まである。いわばオーガニック百貨店だ。宅配便まかせでなく、社員がクルマで配達するから信頼性も高い。
こことは別に、行って買う店は麻布ナショナルスーパーで、ここも社員がデリヴァリーする。電話注文でも届けてくる。
信頼できて、いつでも頼める店。これをしっかり持っていることが、これからの暮しに欠かせないと今回、つくづく思った。
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