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「世界の人々に健康な食を」
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食の安全・安心の世界基準
沖縄の小さな離島・粟国島で《粟国の塩》を製造販売している幸信の会社・株式会社沖縄海塩研究所は、今年(平成二十二年)九月、食品安全管理の国際標準規格ISO22000を取得した。

ISO(アイソ)は、International Organization for Standardizationの略で、国際標準化機構(団体の名称)のこと。現在、世界百四十か国以上が参加し、国際標準規格を策定している。ISOは、様々な分野に及んでいて、工業製品そのものの国際規格もあるが、管理の仕組みに対する規格もある。
日本では、大企業はもとより多くの企業が、様々な分野のISOを取得している。株式会社沖縄海塩研究所が取得したのは、食品安全を目的としたマネジメントの国際規格ISO22000である。具体的には「食塩製造における海水の取水、濃縮、釜炊き、乾燥、充填、包装及び保管」の食品安全管理を目的としたマネジメント規格である。

企業の信頼は安全から
近年、食品偽装、BSE、食中毒、鳥インフルエンザ、無許可農薬の使用など食品安全に関する問題が世界各地で発生しニュースになっている。一方では、より安全な食を確保するために食の履歴を追及できるトレサビリティーシステムも導入が進み、消費者の安全・安心な食卓のために食の情報が提供されるようになってきている。このように消費者の食の安全に対する要求はますます高まる中、食を製造・供給する企業は、問題が発生するリスクに備えるため、安全・安心の製品とサービスが出来る体制を整えることが、企業の良心であり、信頼であり、企業を存続させるためにもっとも重要なファクターである。さらには、食品の流通を世界規模で展開させるためにも、国際標準に則った安全基準の認証の取得が必須である。
ISO22000認証式会場にて


ISO認証取得まで
世界中で食の安全・安心が問題になる中、安全な食品の供給を保障するために設けられたのが今回株式会社沖縄海塩研究所が取得した国際規格のISO22000である。

これは、食品製造の品質・衛生管理認証であるCodexのHACCP(食品衛生管理で世界的に認められている)と品質管理の国際規格ISO9001の要素が含まれた規格で、今回、取得までに一年一か月もの期間を要したほど厳しい審査があり、その期間中には、工場施設、製造工程など様々な改善・改修を行った。また、従業員等には食品の衛生管理などの教育指導が行われた。認証取得のために制作された食品安全マニュアルや衛生基準書などのファイル類は三十冊を越え、取得費用も小企業には大きな負担であった。現在、国内の食品会社でこのISO22000を取得しているのは、大小含めて三百五十社前後で、製塩業社では数社がだけが取得しているだけである。さらに、離島での取得企業は株式会社沖縄海塩研究所ただ一社だけである。

ISO認証で世界へ
なぜ、離島にある小さな手作りの塩工場が、一年以上の歳月と、少なくない費用をかけてこの食品安全の国際標準規格を取得したのか。それは所長の小渡幸信が手作りする「粟国の塩」への厳しい姿勢と強い思いからである。幸信の塩づくりの目標は、塩で世界中の人を健康にすることである。そのためには、体によくおいしいという本物の塩を作ること、それが安全であること、そして世界中の人々に認められることである。さらには、日本の長寿食が世界に認められて欲しいという思いもある。このISO認証の取得は、幸信の悲願でもあったが、取得までの一年間はそれこそ厳しい毎日が続いた。その結果、幸信の世界の人々を健康にという大きな目標に、さらに一歩大きく踏み出した。

(取材・構成/本誌編集部)


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