No.287







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●“取り敢えずビール”という、この国特有の習慣がある。わが山賊仲間も例外ではない。集まればやはり先ずはビールでの乾杯となるのだ。そのままビールを飲み続ける者もあり、すぐに酒や焼酎に切り替える者もいる。儂は節操がないから、注がれるままチャンポンになったりする。それはともかく、拙宅にても“取り敢えず”はある。仕事の区切りに、あるいは集中できなかったり何となく手持ち無沙汰だったりすると、取り敢えずの入浴や取り敢えずのビールになったりするのだ。

▲昨秋は平莢(モロッコ)隠元がちょっとしたマイブームだった。揚げても炒めても煮ても好もしい。風呂上がりに取り敢えずビールをやるときに、摘まみに平莢と蓮根を天ぷらにした。「あっ…そうだ」と、前夜の残りの蛸刺しがあることに気付き、序でにそれも天ぷらにして片付けた。まあ、これも悪くない。次の機会に、ずいぶん遠い国からやって来たらしいインポート蛸を1/2 だけ買い、長旅を犒(ねぎら)いつつ、スライスした脚(腕)二本分に馬鈴薯の澱粉を絡めサッと軽くフリットしてみた。残りの脚と頭(胴)は直火に焙って食べた。結果は単純に焙ったこれが一番だ。頭の部分が特によろしい。初めは軽く塩をしたり醤油を一滴落として食べたが、以後は何も加えずにそのまま摘まむ。ビールと蛸焼きの相性の良さに驚いている。

■蛸焼きと書いて、ふと思い出した。でんでん虫を焼く鉄鍋のようなものでピンポン玉程のメリケン粉の玉を焼くのを、TVで何度か見ている。大阪の名物らしい。儂は関西に縁がないものだから、それをまだ実際に見たことも食べたこともなかった。蛸話が紛らわしくなるから、儂がビールの伴とした方は、改めて「焼き蛸」と呼ぶことにする。

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