No.290







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●恥ずかし(?)ながら、桜の葉で包(くる)んだ〈桜餅〉が好きで、自ら買ってでも、毎春これを賞味している。さて…五月である。「端午の節句」は〈柏餅〉を食して祝う。あんこを米粉の餅で包み、さらに柏の葉で包んで蒸し上げる…この国的完璧なスタイルだと思う。カシワが意味するところは、つまり“炊(かし)き葉”なのだそうだ。ナルホドと儂は大いに合点した。端午の節句だからして〈粽(ちまき)〉も(戴きものがあれば)食すが、こちらは敢えて自ら求めることはない。あのグルグル巻きを解くのは面倒だ。食べるのが面倒なくらいだから、作る人はもっと面倒に違いない。そう考えただけでナンダカとても面倒臭い。

▲朴ノ木の葉もかつては“保宝我之婆(ほうがしわ)”と呼んだらしい。葉の大きさといい…その使い勝手といい…炊き葉の代表選手であることに違いない。縄文人が〈土器〉を発明するずっと以前から、炊き葉としてそれは大いに調法してきたのだ。そこら辺の山地の雑木帯を覗けば、朴ノ木はすぐに見つかる。儂も飛騨の料理などの真似をして、大きな朴の葉の上で、茸類や豆腐を何度か焼いて食べたことがある。野趣を愉しみ、朴葉特有の香りも愉しめた。古代人(びと)はあの葉を折り曲げて、杯としても使ったらしい。どんな形かちょっと想像がつかない。判れば儂もそれで酒を呑んでみたいと思う。朴の枝先の花芽の回りを五〜六枚の葉が囲むのだが、枝ごと切り取ってそのまま葉ごとに団子を包んで蒸す〈朴葉巻〉なるものがある。豪快? 至極! いや、写真で見ただけで、残念ながらまだ実際に触れたことはない。種々の葉っぱを炊き道具・皿・皿の上の飾りとして、大昔から今日に至るまでずっと利用してきた、自然を愛する日本人のデリカシーってスゴイ!

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