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今年三月四日、「がんと統合医療の現状と将来展望〜米国の最新情報〜」と題した特別講演会がNPO免疫療法懇談会の主催によって開催されました。講師は、三十年前、統合医療に本格的に取り組み、米国国立補完代替医療センター創設の中心となった、米国における統合腫瘍学の第一人者でスローン・ケタリング記念がんセンターのバリーR・キャサレス博士でした。

統合医療とは
今回の講演のテーマである統合医療は、最近日本でも注目されています。
西洋医学は、病気の原因を取り除くために薬剤や手術を中心としたもので、急性の感染症や早期のがんなどの治療に優れています。これに対し代替医療といわれる漢方などの東洋医学などは、健康保持など予防を目的とした自然治癒力の向上に適しています。特にがん治療において自然治癒力を高めるということから東洋医学を採用して、がんを体の中から退治するという研究が始まっているように、西洋医学と東洋医学などの医療を統合して相対的に治療しようというのが統合医療です。
さらに、近年、国家の財政を圧迫する医療費の増大は大きな問題です。統合医療を積極的に導入して老人医療に拘らず若いときからの生活習慣病対策など国家レベルで取り組むことが重要になっています。
日本においては、古くから漢方や鍼灸などの東洋医学が伝統的に行われてきました。その後オランダなどから西洋医学が入ってきました。しかし、明治維新の後、西洋医学が急激に普及して、東洋医学は衰退の方向にありました。
戦後、東洋医学は復活してきましたが、大学などで行われる教育・研究は西洋医学が主流で医師の資格も西洋医学だけに与えられており、西洋医学と東洋医学などとの交流はまだまだというのが現状です。
バリーR・キャサレス博士(写真右)と筆者 講演会のパーティーにて


ワイルド博士の医食同源
米国での統合医療は、一九九〇年代から注目されるようになり、現在ハーバード大学を始め、大学の医学部に「代替医療研究センター」を持つ大学が二十校以上にもなっています。
アリゾナ大学の医学博士アンドルー・ワイルド氏は統合医療の第一人者といわれていて、医療の研究の傍ら薬用植物の研究、治癒論の研究、世界各国の伝統医学を実践的研究で知られ、著書の「癒す心、治る力」は医学の革命書といわれています。この中で理想的な食事として、旧石器時代の食事、生食、伝統的な日本食、菜食主義の食事、地中海型の食事などを比較研究しています。
さらに、西洋医学と伝統医学を組み合わせて、食事、運動、補助栄養食品、生薬などを組み合わせ、本来人間に備わっている自然治癒力や免疫力を活性化し維持する方法をプログラム化しています。
このプログラムを実践している博士のレストランは、健康志向や、体調不良で悩んでいる人で数か月先まで予約で一杯だそうです。
また、博士は、日本の食材には自然治癒力を高める力を持ったものが多く、中でも沖縄の食こそが病気にならない体に導くものだと述べています。
今年、琉球王宮料理研究の第一人者の山本彩香さんと長寿健康料理コースを披露するコラボレーションが予定されています。粟国の塩はコースで使われる食材の一つとして指名して頂きました。

身体によい塩
人の健康を考えるとき、本来あるべき自然治癒力を高めることが大切だと思います。よく偏食は病気のもとだといわれます。バランスよい食事をすることが健康を維持する基本です。
特に、日本には体によい食物がたくさんあり、日本人が長寿であることも世界によく知られています。日本の食文化が海外で受け入れられていることにわれわれはもっと誇りを持つと同時に、食について再認識をすべきではないでしょうか。
私の塩づくりも医食同源の考え方が根底にあります。私は幼少の頃から体が弱く、青年期に、ヨガや自然食のサークルで活動していた時、塩が体に大切であることを知りました。その後、恩師・谷克彦氏と塩づくりの研究を始めるのですが、谷氏は、桜沢如一氏が創始したマクロビオテック日本CI協会で「食養」を実践し、塩に関心を持っていました。塩が体の健康のために不可欠なものであるという二人の考え方の結晶として「粟国の塩」が生まれたのです。
統合医療における食の大切さ、その中における塩の役割を考えると、いい塩をつくるという責任を感ぜずにはいられません。



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