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日本は未曾有といわれる地震、津波に襲われ危機的状況にありますが、中でも福島第一原子力発電所は地震と津波により機能停止、さらには建屋が爆発して、放射性物質が外部に漏れ出して近隣住民は強制的に避難させられています。
原発事故は、いまだ収束の見込みさえ立たず、その上、情報不足と、情報の信憑性の問題もあって、風評被害で多くの人たちを不安に陥れています。中でも放射能の影響を一番受けるといわれている乳幼児や子どもたちを持つ家族のイライラは限界を超えています。
ここ沖縄にも沖縄に実家を持つ被災地の母親が子どもたちを連れてたくさん避難しています。


最近、私はお客様から次のような質問を度々受けるようになりました。それは、原発事故により漏れ出した放射性物質の“放射性ヨウ素”について、塩に含まれている“ヨウ素”と同じものなのかどうかという疑問です。


塩にヨウ素が含まれていることをご存知なのは、にがり分を含んだ塩をお使いになっておられる方だと思います。確かに、塩のパッケージにある「栄養成分分析表」をご覧になると、ヨウ素やストロンチウムの記載があるものがあります。
海水からつくられる塩の中には、にがり分を多く含んでいる塩があり、私の作る「粟国の塩」にもマグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、リン、硫黄、コバルト、ストロンチウムなど六十種類余のミネラル分が含まれています。海水に含まれるミネラル分は、とても微量ですが、人体に不可欠な栄養素で、ヨウ素もその中の一つで、日本の厚生労働省や米国のFDA(食品医薬品局)などでは、人体に必要不可欠な必須ミネラルの一つとして位置づけています。


まず、ご質問のお答えとして、放射性ヨウ素と塩に含まれているヨウ素は違うもので、当然ながら塩に含まれるヨウ素には放射性がないことを明らかにしておきたいと思います。

「粟国の塩」のパッケージ裏にある栄養成分分析表

今回は塩に含まれるヨウ素について少しご説明させていただきます。
ヨウ素は自然界に存在し、特に海水中に多く存在するため、海藻類や魚介類に多く含まれていて、海藻から火薬を製造する際に偶然発見された元素で、ヨードとも呼ばれます。
一般にはヨウ素は食品から摂取できます。海に囲まれた日本では海産物を多く食べるため、ヨウ素不足になる心配はあまりありませんが、外国の山岳地帯や、内陸部など海から離れた地域では、海産物をあまり食べないため、ヨウ素不足が深刻な問題となっています。
岩塩を使っている中国などでは、岩塩にはミネラル分が含まれていないため、食塩にヨウ素の添加を義務付けています。また、米国では、食塩にヨウ化ナトリウムを混合させるようFDAが規定しています。


ヨウ素は生体内で、そのほとんどが甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンの構成物質として重要な役割をしています。
ヨウ素の摂取が不足すると、甲状腺ホルモンの生成が出来なくなり、甲状腺腫の肥大、甲状腺腫、甲状腺機能低下、精神発達の遅滞、成長発達異常などが起こります。またヨウ素は、糖質、蛋白質、脂質の代謝を促して基礎代謝を高めて発育を活発にすること、余分な脂肪を燃焼させ、太りにくい体質にすることも分っています。


放射性ヨウ素による内部被爆は、甲状腺がん、甲状腺機能低下等の晩発的な障害リスクを高めます。ちなみに、食べ物から摂取されたヨウ素は全てが甲状腺に集まるため、大量にヨウ素を摂取した場合は、甲状腺にヨウ素が蓄積され、それ以上ヨウ素を摂取しても、その大半は血中から尿で排出され甲状腺に蓄積されません。そのため原子力災害時、「安定ヨウ素剤」を予防的に服用して甲状腺内をヨウ素で満たしておくと、以後の放射性ヨウ素などの取り込みが阻害されるという効果があり、放射線障害の予防が出来るといわれています。


塩に含まれるストロンチウムという天然ミネラルも、放射性ではありませんから安心してください。このストロンチウムは、米国の最先端の研究で、カルシウムやマグネシウムなどと共に骨の健康に役立っていることが分かっています。

最後に、とにもかくにも原子力発電所事故の一時も早い収束を祈りたいと思います。



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