No.292







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●嘗て数十名の三才児に、(個別に)太陽を描いてもらった事がある。全ての子が三十六色の色鉛筆の中から赤(カーマイン)を選んで塗り潰し、そのうち半数の子は赤丸の廻りにチャチャチャと毛を生やした。何故真っ赤に…こんな幼い子供が、何時・何処で刷り込まれてしまったのだろう(?)と不思議に思い、「毛を生やした太陽」という一文を記したことがある。とまれ、赤大好きのお国柄である。因にわがご贔屓のフットボール・チームのジャージも赤なのだ。
▲親子程年の違う知人が「赤飯が好きでね、自分で買って食べたりするんです」なんて話していた。先日、強飯売場の前を通り掛かり、ふと足を止め、急に赤飯を食べたくなり買って帰った。「あっ」と気付いた。儂もあの頃の知人と同年代に達している。お祝い事でお配りしたり、お配りされたりするだけじゃなくて、食べたくて食べるのもアリなんだ…と改めて悟る。
■何故赤の飯なのか…1.それは縄文の昔は赤米が日常食だったからで、白米の時代になっても“事”のたびに赤くしたくなるのだ…という説があり、2.いや、小豆を混ぜるのは遠く東南アジア時代に遡る民族の血脈によるのだ…説もあり、3.とにかく赤(災厄を払う霊力がある…とする)が大好き、4.連作で衰える地味を回復させる植物として小豆は焼畑に付きもの。転じて生命力のシンボルとしてそれを肉体の中に取り込もうとする心…等々が伝えられている。赤飯のお重に南天の小枝が添えてあったりする。1.“難を転ずる”を掛けた洒落だったり、2.防腐その他の薬効、あるいは南天の葉が毒に接すると変色する(?)ので「毒はありませんョ」という証になる…という説もある。そんな事に関係なく、儂はとても美しいと思う。

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