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日本には一年を四等分した変化に富んだ四季があり、自然は春夏秋冬それぞれの季節に適した食材を私たちに与えてくれます。その土地でとれた旬の食材が美味しく、栄養価も高く、体にもよく、さらに価格も安いことはよく知られています。

四季折々の旬野菜には私たちの体調を整えてくれるチカラがあります。
昔から「春には苦いものを食べよ」といわれるように、春野菜には山菜に代表される新芽など苦味のあるものが多いのが特徴です。この苦味には老化防止が期待できるポリフェノールや新陳代謝を促進する成分が含まれています。

夏の旬野菜の代表は、キュウリ、トマト、ピーマン、ナスなどで、夏の暑さでほてった体を冷してくれます。キュウリは利尿作用に優れていて、体にこもった熱を尿と一緒に排出してくれます。その上、水分のとりすぎで起こるむくみも取ってくれます。

また、夏野菜には、オクラ、ツルムラサキ、モロヘイヤなど疲労回復効果の高い野菜も豊富です。これらの特徴は苦味とネバネバした食感で、苦味が食欲を刺激し、とろりとした食感は暑くて食欲が無いときでも、するっとのどを通してくれます。しかも、このネバネバ(山芋・里芋にある同じムチンという成分)は、内臓の調子を整え、疲労回復を促進してくれ、いま話題のアンチエイジングにも効果があります。

夏の暑さによる疲れで体調を崩しがちな秋は、イモ類やキノコ類などの秋野菜が豊富なビタミン、ミネラルで疲れを癒してくれます。

冬の野菜はβ―カロテンやビタミンCが多く含まれ、皮膚・粘膜の保護や老化予防の効果が期待できます。また、根野菜類は冷えた体を芯から温めてくれます。


同じ国ではありますが、沖縄は四季が単純で、春・秋等の微妙な気候があまり感じられないため、本土とは異なる作物が育ちます。亜熱帯の特性で東南アジアに近い農作物・魚類が主流で、食に関しては中国の影響を大きく受けています。旬の野菜では夏に体を冷やしてくれるゴーヤーやヘチマなどはありますが、本土ほど季節ごとの種類はありません。
琉球料理の多くが東南アジア料理・中華料理に似かよった部分があり、また私の生まれたサイパンと同様昔は芋が常食でした。

「粟国の塩」と粟国島の自然の恵み


中国では医食同源という考えが古くから伝えられています。中国文化に深く関わりのある沖縄でもその影響は強く、食事の際「クスイムン(薬になるもの)」「ヌチグスイ(命の薬)」などと料理を評したり、ごちそうさまのことを「クスイナタン(薬になりました)」と昔から言います。
このように食と薬は同じであるという考えが沖縄にはあります。本土ほど旬なものが多くはありませんが、この思想こそが沖縄を長寿の島にしているのではないでしょうか。

また、台風などの自然災害が多い地域であるため農業に適した地域ではありません。そのために食材の栄養成分を充分に搾り出す調理法が昔から受け継がれています。シンジ(煎じる)という方法です。食物が持つ滋養作用・薬効をシンジにより引き出し健康な体を作るのです。琉球料理の汁ものなどがそれにあたります。

その沖縄発の長寿の考えは今やインターナショナルになっていて、発行部数一千万部を超えるといわれる「ナショナルジオグラフィック」でも沖縄の長寿とその食の特集が組まれ、統合医学の第一人者であるアンドリュー・ワイル博士も沖縄の長寿に深い興味を示しています。博士は薬用植物の研究の権威者でもあり、人間に生まれながらに備わっている自然治癒力を最大限に引き出す伝統食の中で特に沖縄の食の可能性に着目しています。


長寿という点で、沖縄では塩も大きな役目を果たしています。暑い夏を乗り切るために旧正月に解体した豚を塩漬け(スーチカー)にします。豚肉は三大栄養素の代謝を助けるビタミンB群が豊富で 、その中のビタミンB1は糖質の代謝や神経の働きに関係しているため、疲労を回復させ、ストレスを防いでくれるので、精神安定、美肌効果にも繋がりますが、塩漬けにすることで冷蔵庫のない時代に保存の効果を高めるとともに、暑い夏を乗り切るための熱中症対策にもなりました。


私の塩工場でも、島の旬の食材を使い、塩を活用した料理を従業員がつくりお客様をおもてなしします。
イラブチャー(ブダイ)の塩釜、魚の澄まし汁、魚の塩煮、野草の天ぷら、これらはすべて塩のみで食材の旨味を引き立てます。食材の旨味・甘味が際立ち、素人料理ではありますが、お客様にはいつも満足していただいています。
今年は六月からすでに猛暑日が続いています。料理にうまく塩を活用することで熱中症予防と健康で楽しい夏が過ごせるのではないでしょうか。



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