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九月に入っての我が菜園は、秋茄子とパプリカ、それに数種類の唐辛子のみとなってしまった。すべてナス科の植物ばかりである。同じナスの仲間であるトマトは、残念ながら青枯れ病というウイルスによる病気で全滅。例年であれば十月、いや十一月の半ばくらいまでは収穫があった筈のトマトを失った痛手は大きい。特に悔しいのは、サンマルツァーノというイタリア産の調理用トマトが収穫出来なかったこと。専門家に問い合わせてみたら、土の中にウイルスが入ってしまうと、どんなに農薬を用いても手後れだそうである。来年の予防として、土の中に石灰窒素というのをよく混ぜて、土を掘り返して太陽に当てて消毒しておかねばならないそうだ。といっても、ほとんどの野菜類は連作を避けた方が無難だから、トマトを植えていた畝はしばらく休ませようと考えている。

同じナス科のナスや唐辛子は野生に近いのか、かなり順調に育って昨年の倍近い収穫が見込まれる。が、山ほどの唐辛子は絶対に食べ切れるものではない、オリーブオイルに漬け込み、御歳暮として友人達に送ろうとおもう。ナスはスライスにして天日に晒して乾燥させると、間違いなく来年のナスが実る迄は十分に持つ。水で戻して炒め煮などにするとかなり重宝する、そう干したゼンマイと同じようにすればよいし、ゼンマイやタケノコ(マダケのタケノコを六月に採って、水煮にした後冷凍保存をしている)と合わせて煮てもおいしい。抑制栽培をしたキュウリは、うまく育てると十月くらいまでは何とか収穫できるのだが、今年の夏は雨乞いをするほどの日照りが続いたのでこれも全滅してしまった。

Kubota Tamami

となると、これからの期待は秋と冬の野菜に託すしかない。ニンジンは辛うじて芽を出してくれているし、白菜も種を蒔いたら二日で可愛い顔をプランターの土を割って覗かせた。大事に苗を育てて、畑に植えかえれば立派な漬け物用の白菜となってくれる筈。昨年植えた白菜は、収穫寸前にヒヨドリやムクドリに食べられてしまったから、今年はある程度育ったところで防鳥ネットを忘れずにかけよう。葉もの野菜の天敵は鳥ばかりではない、青虫や夜盗虫の被害も馬鹿には出来ない。うっかりすると、一晩で葉が完全にレース状になってしまうことがある。陽が沈んだところで、懐中電気をもって畑に行くのだが、一晩で八十匹くらいの虫を捉えたことがある。今年は、実験的にフェロモントラップというのを用意した。これからの季節、蛾が交尾をして青物に卵を産みつけるのだから、雄の蛾を悩ましいフェロモンを用いて捕獲する作戦だ。

さて、冬野菜であるが、キャベツやカリフラワーブロッコリーは、苗さえしっかり準備をした畑に植えれば問題なく育つことがわかった。これからの冬に向っての課題は、大根であろう。毎年大根は植えているのでおおよそのことは分かっている積りだが、今期は沢庵用に練馬大根を植えようと思っている。この練馬大根、通常の大根より二十センチは長い。ということは、畑を掘り起こすのも一メートルほど掘り返して土を柔らかくしておかねばならない。この作業を、残暑の厳しい時に行なうのは大変なこと。昔田んぼだった畑はちょっと深く掘ると粘土が出て来る。粘土だけならばよいのだが、石がゾロゾロ出て来たのには忍耐強い女房殿も参っていた。大根の特性で、土の中で何か異物にぶつかるとそこから根が分かれてしまうようだ。二股や三股の大根ではよい沢庵は出来ない。

大根を収穫したら数日干して、糠と塩と唐辛子を合わせ、樽に詰め込んで重石をのせて待つだけ。果して、来年の食卓には旨い沢庵が姿を見せてくれるのであろうか、今から楽しみである。


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