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塩といえば、料理の味付け、生ものの保存、味噌・醤油づくり、そして漬物などをはじめに連想すると思いますが、塩に含まれるナトリウムはじめ各種のミネラルは、ヒトや生き物が生きてゆくために不可欠であることも忘れてはなりません。
例えば、去年も今年も夏の暑さは熱帯以上、熱中症がニュースで毎日のように報じられていました。その熱中症対策では、スポーツや行楽はもとより通勤・通学にまでペットボトルを持ち歩き、水分補給が重要であることが理解されてきたように思います。ただ、水分だけでは、熱中症は防ぐことは出来ません。塩に含まれるミネラルが重要な働きをするのです。ひどい熱中症になると呼吸困難や痙攣を起すことがありますが、それはミネラル不足の可能性が考えられます。例えばナトリウムやカリウムは、心臓や筋肉の機能を調整する働きがあるのです。
熱中症には、水ににがりを数滴加えた「にがり水」をお勧めします。


ミネラルのバランス
よくミネラルバランスといいますが、ナトリウムとカリウムの関係が代表的な組み合わせで、複数のミネラルをバランスよく摂ることにより、その効能が効果的に発揮されるのです。
ナトリウムは人の体内の細胞の外側にあり、カリウムは細胞内液にあって、健康であれば両者は約二対一という一定のバランスで保たれています。細胞膜には「ナトリウムカリウムポンプ」といわれる調整機能があって、ナトリウムを過剰に摂取、あるいはカリウムが不足すると、ナトリウムとのバランスが崩れナトリウムの濃度を下げるために水分を摂り入れることになります。必要以上のカリウムは腎臓や副腎の働きにより汗や尿として排出され、同時に同量のナトリウムも排出されます。カリウムが過剰になると筋肉が収縮しにくい状態のいわゆる高カリウム血症や低血圧の症状になります。また、カリウムが欠乏すると筋肉が収縮しやすくなり、こむら返りや不整脈、さらには突然死などに至る場合もあります。


製造方法で味、形状、成分は違う
現在、日本国内では六百以上の製塩所がありますが、そのうち沖縄には約三十の製塩所があります。これらの製塩所ではそれぞれ異なる方法で塩を製造しています。海水を濃縮する最初の工程では、イオン交換膜や逆浸透膜等を利用する方法、海外から原塩を輸入して溶解する方法、塩田等を利用して自然濃縮する方法などがあります。さらに塩を濃縮して結晶にする工程でも、平釜や立釜で加熱する方法、噴霧乾燥、過熱ドラムなどを使用する方法があります。当然、出来上がった塩は各製法により味、形状、成分などに違いが出てきます。中にはナトリウム分が九九・九%という塩もあります。また各種ミネラルが含まれた塩でも、含まれているミネラルのバランスや量は塩により様々です。

添加物が添加されている塩を見分ける実験。右側が添加物がある塩、一目瞭然です


何が添加されているのか
中には添加物を添加している塩もあります。添加物の多くは塩化カリウムです。減塩ブームの現在、塩化カリウムの含有比率を上げると、ナトリウムの含有比率の数値は低くなることから減塩塩として一般に販売されています。塩化カリウムを添加している塩は、低ナトリウム食品として高血圧症などの病人用に厚生労働省が認可しているものですが、これを使用する場合は、医師との相談が必要になります。アメリカでは医師の監督下で使用するように、さらにオーストラリアでは利尿剤を服用している人は使用しないように注意書きされています。この塩を医師の指示なしに使用すると前記で説明したミネラルバランスが崩れてカリウム過剰摂取になり、カリウム血症など多くの病気の原因になる危険があります。
塩化カリウムは食品添加物となっていますが使用制限がありません。わが国では塩化カリウムの危険性への認識が低いように思います。
また、最近サラサラのパウダー状の塩が好まれる傾向にありますが、これにはカリウムや乾燥剤の炭酸マグネシウムを添加してあるものもあります。炭酸マグネシウムは体内で吸収されにくい物質です。
これら添加物が添加されている塩を見分ける簡単な方法をお教えします。コップに水を満たし塩を入れてよくかき混ぜます。何も添加物が無い塩を入れたコップの水は少し経つと透明に透き通りますが、添加物のあるものは、完全に溶けずに白濁し浮遊物が浮いてきます。


自然がすべて
塩はあくまでも自然でなければならない、これが、私の塩づくりに対するこだわりです。自然が今なお残る沖縄の小さな美しい島、多くの魚やさんご礁などを育んでいる海水だけが私の作る「粟国の塩」の原料なのです。「いのちは海から」ここに私の塩づくりのすべてがあります。



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