永年使ってきて、永遠にあると思っていた店が、建て替えとはいえ、突然閉めるとは。考えたらナショナル麻布が一九六〇年代にオープンして以来、私はここを使ってきた。青山の紀ノ国屋が日本のスーパーマーケットのはしり(一九五三年オープン)だが、私の愛用はナショナルだ。なぜならナショナルは、単に食料品を買うだけの場所でなく、私をハッピーにしてくれるから。
マーケティングの第一人者、フィリップ・コトラーは言う。「(企業は)もはや顧客を満足させるだけでは十分ではない。顧客を喜ばせる必要がある」
〈"It is no longer enough to satisfy customers. You must delight them." P.Kotler〉
ナショナルのフェイス・ブックに、たちまち外国人が書き込みをしたのも、生活の危機感からだ。ここ無しには、安全、安心、楽しい生活が崩れるからだ。
「This is the second "National" disaster this year!」――は、ナショナル麻布と国家的=ナショナルをかけたジョークでの傑作。第一番目が福島原発事故(しかもあれは「フクシマ・ダイイチ」という名)、二番目がナショナル麻布、というわけだ。輸入品に大幅に頼る暮しの外国人には、ほんとにこれは大災害! に感じられるはず。「ここがなくなったら、日本から出るときだ」と書いた外国人、「ここがいいから近くのマンシ
ョンに引っ越したのに、ショック!」という人も。