いつでも、どこでも気軽に取り出して食べられる携行食――といったら、だんぜん、おむすび! それも焼きむすび。ゼッタイにおいしい!
私はおむすび大好きニンゲン。日々の暮しには、ご飯はなくてもパン! というパン・スキーなのに、焼きむすびだけは別格だ。
作り方でみると、おむすびには、外側を何か(シソや海苔)でまく(ギリシャ料理のブドウの葉のように)、中に何か(梅干し、鮭、肉の佃煮)を詰める(ピロシキみたいに)、ご飯に何かをまぶす(じゃこやタラコ)など、さまざまだ。でも全体を黄金色に焼いて表がパリっとした焼きむすびの美味にまさるものは稀。
実は最近、発見したヒット作がある。これをまずお知らせ。千葉の地震が続いた不気味な三月、アミは夜ごと、ご飯を一合炊いて、小さなおむすびにして停電に備えたことは、前に書いた。
翌日、なにごともなくホッとしつつ、私たちは少し固くなったおむすびを前にアタマをひねった。どうしよう? うん、これだ! 私は、鉄の重いフライパンを取りだした。
「オリーヴオイルたっぷり入れて焼くのよ」
ちょうど、七個のおむすびがはいった。鋳鉄の鉄のまっ黒いフライパンは重いけれど、アメリカではキッチンに欠かせない道具のひとつ。大型はベーコンを真っすぐ、ぱりっと焼くのにいいし、小さいのは目玉焼きやポテトのスライスを焦んがり焼くのに向く。
以前は、焼きむすびは網で焼くものだった。能登は珠洲の湯宿「さか本」で出された、土地のイワシからとったイシルをまぜて、オーヴンで焼いた焼き結びに開眼。焦げやすく時間もかかる網焼きはヤメよう、ときめた。鉄のフライパンならルンルンで、外は黄金色のパリッとし、中はオイルでつやつや! ができあがる。粟国の塩をちょっとふって、キッチンに置くと、あっというまに消えてしまう。
以来、しばしばこれをつくっている。ぜひお試しを。オリーヴオイルは、エクストラヴァージンでなく、普通のほうで大丈夫。
私のいちにちは、ルヴァンの全粒粉二十五%のコンプレ というパンのトーストで始まる。ご飯を食べない日はあっても、パンのない日は考えられない。なのに、おむすびだけは、ゼッタイにこの焼きむすび、そして長距離のドライヴも、サンドゥィッチでなく、これだ。なぜって、サンドゥィッチは中身がこぼれる! とにかくいちど走りだしたら、給油以外はストップしたくない。目も耳もすべて走行に集中、クルージング第一の走りをするから、それにはお弁当の機能性が大事、同時に美味なこと。その答えは焼きむすび。
「京都の往復も、これだったわね」と私。
「帰りは、ホテルの和食が〈たん熊〉だったから、よーく焼いた小さな焼きむすび、そしてキュウリのスティックをたっぷり、細かいものはいらない」とフロントに伝言。店一番の人が作ってくれ、小ささ、焼き加減、大成功だった。
どうしてお弁当というと、たいていの人がお弁当箱にご飯とおかずを詰めるのか、なぜおむすび(焼いたのでなくても)にしないのかフシギだ。おむすびなら、帰りに邪魔になるお弁当箱なんかない。空いた菓子箱を再利用で使えば、捨てて身軽になれる。
列車のときは、席にテーブルが出る「悠々環境」だから、サンドゥィッチや、パンとお料理を別々に持っていって、自分でおいしくまとめる。車内売りを買って食べるのはお金を捨てるようなもの。
ANAの機内誌『翼の王国』(WINGSPAN)の、「お弁当の時間」という連載が好きで、私は真っ先にそこを開く。でも、おむすびはほとんど登場しないのがふしぎ。(サンドゥィッチもほとんどない)。お弁当箱という容器にこだわると、ご飯とおかず、になってしまうのかも?
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