そもそも、どうして犬に臭気選別などということをやらせるようになったかと言うと、その動機は至って不純である。僕がテレビを見ていて、イタリアやフランスでは犬にトリュフを探させることを知った。日本でも、松茸を探すのに犬を使う人がいるそうである。もともと匂いに対して敏感な犬だったので、これはと思い訓練士に松茸犬にして下さい、と馬鹿馬鹿しい申し出をした。松茸の訓練はともかくとして、匂いを識別する訓練は致しましょう、ということで犬にとっては地獄の訓練が始まったのである。
しかし、犬にとっては迷惑な話で、次第に訓練から逃避するような態度を示すようになってしまった。一度だけ大会でよい成績を納めたことがあったが、喜んだのは人間だけである。正直なところ、もう訓練は止めようと考えたのだが、その前に松茸や椎茸を家の中に隠して探させたところ、これは遊びであると判断したものか嬉々として探し当てるのである。
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